1、参加から協働へ〜行政・市民・NPOの新しい関係を創る〜

地域自治、市民自治を目的とする分権改革を実現するためには、政策形成や事業計画段階から市民やNPOとの協働が不可欠です。そのためには、情報の共有化、説明責任と対話性の確保、市民やNPO活動への支援、行政や市民の意識改革などとともに、市民参加条例の制定などそれらを制度面で保障する仕組みも必要です。

参加と協働による公共政策・事業の遂行
以下の施策について、「市民が学習し理解する機会」、「政策形成または事業計画段階で意見表明する機会」、「合意形成する機会」、の3つの機会を保障すること。
・四街道市との合併協議
・都市計画マスタープランの策定
・長期計画や基本計画、指針などの策定や改廃
・広く市民生活に影響を与える規制に関する条例その他の制度の制定又は改廃
・広く市民の利用に供される公共施設計画

市民参加の制度化
新総合ビジョンでうたわれている市民参加条例を、試案検討の段階から広範な市民やNPOと協働で策定し、そのプロセスをすべてインターネット等で公開すること。
市民と行政の役割と責務、市民参加の内容(対象、機会、方法、結果の取り扱い、情報の公表、意見提出手続き、住民投票など)、市民参加に関する基本的事項の調査・審議などの項目を市民参加条例に規定すること。

市民やNPOとの協働の基盤づくり
・NPOへの事業委託のルールを策定すること。
・市民活動支援の総合窓口を設置するとともに庁内連絡体制を整備すること。
・行政担当者の意識改革(とりわけ部課長クラス)に取り組むとともに、市民やNPOとの協働の進捗状況について庁内及び外部(市民や独立した監査機関)の評価体制を整備すること。

2、自治体内分権に向けて

自治体がこれまで担ってきた機能の一部をNPOや住民団体に移譲する「自治体内分権」を進めるため、まず以下の施策の実施に向けた検討と条件整備に取り組むこと。
・区役所を企画、政策、まちづくりの拠点機能など総合的な機能を持つものとして、権限を委譲していくこと。
・各区内に地域のまちづくりの課題について協議する住民組織を一定の区域毎(たとえば中学校区単位など)に設けること。
循環型社会構築について
昨年度は「千葉市清掃行政への提言」を通じて、人口予測の過大評価・ゴミ総排出量を増加とする目標数値・農業や教育など他部局との未連携などを問題点とし、脱焼却・脱埋め立てへのシミュレーションを通じて、北谷津清掃工場建て替えへの疑問符を投げかけました。ゼロエミッションを謳う蘇我エコロジーパーク構想が進行し、また将来の廃棄物処理問題を内包した四街道市との合併が協議され始め、財政的な裏づけがなされつつある現在、環境行政としての廃棄物処理の視点を今一度検討しなおす必要があると考えます。これまでは排出された廃棄物の適正処理が廃棄物行政の課題でしたが、今後はマテリアルリサイクルを基本理念とし、ものを生産する時からごみになったその後までを考えるゼロ・ウェイストを実現していくべきです。地球温暖化防止にも関わる自然エネルギー導入や地球環境を守るケミカルコントロールの課題、雨水・地下水など水循環の課題、また将来への財政負担などを克服していくためにも、環境教育やいずみグリーンビレッジ構想の推進や地域農業の育成を図る農政部局など、幅広い行政分野との連携が不可欠です。環境問題に心を寄せるNPOや市民、そして拡大生産者責任を負うべき事業者との協働の中での全庁をあげての循環型社会づくりでこそ、千葉の土壌、水質、大気の保全が可能となります。


3、千葉市臨海部地域のまちづくりについて
小泉内閣の都市再生本部は特別措置法を実施するために、都市計画法、建築基準法、都市再開発法などを一部改正して、一部の大手事業者に法外な優遇措置をはかれるような規制緩和を行いました。
千葉市においても、JFEスチール・都市基盤整備公団・ジェフ市原などを救済するかのような事業展開が蘇我特定地区で行われようとしています。これまでの土地利用の方針を変更してまでおこなわれる再開発計画は千葉市にとって負の遺産となることは明らかです。だからこそ、施策展開の透明性や市民参画のプロセスが必要です。
蘇我エコロジーパークは水と緑の環境軸などうたわれていますが、サーマルリサイクル中心であり、今後の廃棄物エネルギーが二酸化炭素削減のお荷物になるかもしれません。民間主導の環境ビジネスの思うが侭にさせるのでなく、工場跡地だからこそ、千葉市の環境部門と連携し、土壌・大気・地下水などの保全、有害化学物質のリスク管理を行っていかなければなりません。
都市再生緊急整備地域に指定された蘇我の再開発地域への就業人口7万人、定住人口5.5万人という推計は過大であり、ほかの地域のまちづくりとの整合性がとれなくなります。都市計画マスタープランを策定する好機を生かして、東工場跡地の再開発が千葉市のまちづくりにもたらす影響について検証する場をもつべきです。
蘇我特定地区で進む事業の総額1601億円のうち、千葉市負担分は35%の558億円にもあたります。地域福祉を充実すべき時代に、これほどの公共事業がほんとうに必要だとは思えません。計画アセスメントの視点で議論する場がなかったわけですから、市民参画で評価できるような監視体制づくりを求めたいと思います。

4、子どもについて

現在、子どもに対する施策は保健福祉局の「子ども家庭福祉課」「子育て支援課」、教育委員会、また子どもを育む社会の形成という視点では市民局の男女共同参画課などがそれぞれ取り組んでいます。今後の施策展開にあたっては、「子どもの最善の利益」を優先し、すべての子どもの人権が守られ、個々に必要とされる支援を受けながら自己を確立していくことができるよう、子どもに関連した部局のより一層の連携が求められています。
また、子どものおかれた環境や行動範囲、家庭を軸に地域のなかでどのように守り育て、地域や社会の構成員として政策決定へ参画できるようにしていくかということが、今後の子ども施策を展開していく上で重要です。
・子どもを健やかに生み育てられる環境の整備を図ること。男女共同参画の視点からも、妊娠・出産・育児の際の休業制度を実質的に取れるような、行動計画を策定すること。(市内事業者にも指導)
・ノーマライゼーションの考え方のもとに子どもを取り巻く環境を整えること。
・特別なニーズをもつ子どもについては、個別支援計画を策定し、各機関が連携を取って継続的に子どもの成長を見守るようにすること。
・子育て支援策については、当事者の意見を反映させる制度を設けること。
・保育所(園)と幼稚園の一元化を検討し、親の就労に関わらず、子どもの成長に適した保育と親の選択が認められるようにすること。
・市の施策や学校教育について、子どもたちが自由に意見を述べる機会を設けること。


5、地域福祉計画について

2000年4月にスタートした介護保険制度、そして2003年4月からの障害をもつ人の支援費制度は、措置から契約へと福祉のあり方を大きく変えました。しかし地域で住みつづけるためには地域の福祉資源の発掘や、ネットワークの構築が不可欠です。2000年に制定された社会福祉法には地域福祉の推進が基本理念の一つに掲げられ市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画の策定が明文化されました。
千葉県では骨子案、素案を公開し、各地域ごとに多くの当事者・市民が実行委員会を立ち上げ、意見を計画に反映するためのタウンミーティングが開かれています。千葉市には2001年から2005年までの地域保健福祉推進計画がありますが、「地域の個別性尊重」、「利用者主体」、「ネットワーク化」、「公民協働」、「住民参加」の5原則に基づいて策定されたものではありません。高齢者・障害をもつ人・子どもという縦割りの施策ではなく、誰もが安心して暮らし続けることができる地域づくりのための新しい発想が求められています。千葉市でも地域福祉計画づくりに向けて全庁的な体制づくりをすすめ、当事者参画そして地域の自発性をいかした計画の早期策定を求めます。


6、住民基本台帳ネットワークシステムについて
住基カードの発行・住民票の広域交付・転入転出の簡素化に伴う本格稼働の8月25日を前に、市民ネットワークでは個人情報保護の安全性が確認されないもとでは二次稼働しないよう市長に要望書を提出しました。
長野県の田中知事はインターネットと住基ネットがつながっているところが県内では22、全国では約800あるとしてこれらの自治体に住基ネットへの切断を求め、さらに実際に侵入実験も行うことを表明しました。また最近問題となっている新種のコンピューターウイルスによる被害も深刻であり、千葉県内においてインターネットとのつながりが指摘されている10自治体の存在は問題です。市町村長は住民票データの漏洩等のないよう、適切な管理の措置義務があるとされていますが、3300の自治体と国の機関、それと住基ネットが結ばれた全国ネットワークでは、千葉市のセキュリティが高くともその安全性は確保されたとはいえません。「選択制」の自治体や「切断、不参加」の自治体が問題にしている点について千葉市は真摯に検討、調査をし、市としての考えや対策、方向について、市民に広く説明をすべきです。
また、住基ネットは自分の情報を載せるか載せないのかを自分で判断する自己情報コントロール権を認めていません。しかも、誰が誰の情報にアクセスしたかを知るためのログ情報の開示も本格稼動には間に合いませんでした。地方分権の時代、千葉市が住基ネットから一時離脱し、市民選択制などを市民とともに検討する事を要望します。

7、市町村合併について
千葉市の「合併に関する基礎調査」報告書では、すでに政令指定都市である千葉市にとって、一般論としての行財政基盤の強化といった直接のメリットはないが、県都として「千葉県全体の発展を視野に」総合的な視点からの議論が必要である、としています。その後、四街道市からの住民発議を受け本年2月5日に合併協議会が設置されましたが、千葉市民の関心は低く、協議会の傍聴もそのほとんどが四街道市民です。
今回の合併の目玉である合併特例債は、千葉市の試算では300億円程度と見積もられ、返済の多くは交付税措置されることになっています。その他に今後千葉市の制度を適用することで施設整備などの基盤整備にどのくらいの費用がかかるか不明ですが、借金が増えるのは明らかです。来年度から具体化される国の三位一体の改革により、補助金、交付税などの削減が言われています。この改革により千葉市の合併特例債が交付税措置の対象から外れる可能性も否定できません。
まずは、千葉市・四街道市合併協議会が、合併の是非を含み、期限を定めずに審議する場であることを千葉市民に周知することが必要です。きちんと議論できるための資料と時間を確保し、さらに合意が難しいことを想定し、住民投票制度の確立を提案します。
・ 千葉市内各区で合併についての説明会を早急に開催すること。
要請があれば出前で説明会をおこなうこと。
・ 市民生活に直接関わる両市間の行政制度については、合併協議会の資料も含め、徹底した情報開示を行い、広く市民意見を求め、合併協議会に反映すること。
・ 建設計画については、合併特例債など特例法の財政支援に頼らない範囲で計画すること。