討論

岩ア 明子

市民ネットワークの岩崎明子でございます。

市長から提案のあった議案第114号から第132号までについては賛成の立場から、発議第7号については反対の立場から、討論いたします。
まず、議案第117号・千葉市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の制定について及び
議案第118号・千葉市個人情報保護条例の一部改正についてです。

両議案とも、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」いわゆる「マイナンバー法」の制定に伴うもので、
議案第117号は、行政が個人番号を利用するために、定義と個人番号の利用範囲など必要な事項を条例として定めるというもの。
議案第118号は、特定個人情報等の取り扱いについてマイナンバー法等と同様に規定するとともに、新たに、「再委託」を受けた者および「派遣労働者」を条例の対象とし、個人情報の適正な取り扱いを義務付け、不適正な取り扱いをした場合に罰則を適用するための条例改正です。
私ども市民ネットワークは、マイナンバー制度は多くの問題をはらむ制度だと認識しております。国は行政コストの圧縮や、税や社会保障の徴収、給付をより適正にする効果を見込むとされていますが、国にとっては利点があっても、中小の事業者はこのシステムに対応するための投資をしなければなりません。市民にとってのメリットも少なく、個人情報漏えいの危険性が高まるものと考えています。例えばなりすましによる情報漏えいの被害。DV加害者が被害者の個人情報を取得し悪用する恐れや、高齢者等がカードを紛失して情報が漏えいするケースも考えられます。
個人情報カードの利用範囲も、思わぬ方向へ拡大されかねません。例えば先日報道されたように、消費税率10%引き上げ時に「個人番号カード」を使って飲食料品の購入で支払った消費­税の2%分を還付する案が提出されていますが、個人の消費行動を国が把握するというプライバシー侵害も甚だしい上に、カードを買い物時も持ち歩くことになり、カード紛失や情報漏えいの危険性がさらに高まると思われるため、この利用の仕方には反対です。
そのような中でも、来月10月からは順次、マイナンバーの「通知カード」と、「顔写真付きの個人番号カード」の交付を受けるための申請書の発送が始まり、平成28年1月には、行政手続きにマイナンバーの使用が開始となります。
この制度は既に走り出しており、個人情報保護を無防備にするわけにはいきません。個人情報を取り扱う立場にある行政の職員や委託・再委託を受けた者・派遣労働者等に向けて、取り扱う際の定義や決まり事は定めておく必要があるという理由から、議案にはやむなく賛成いたしますが、
私たちがマイナンバー制度の導入にあたって懸念していることを申し上げておきます。まず、制度の導入に伴う情報漏洩対策については、
多様な情報流出のケースを想定した、プライバシー保護の取り組みおよび、市民に対する制度の利便性と安全性についての積極的な啓発活動を求めます。
絶対に避けなければならないのは、個人情報の漏えいによる被害・人権侵害です。一番気を付けるべきなのは人の手によって情報が漏れてしまうことで、例えば高齢者が、個人番号カードに設定した暗証番号を見られてしまうなど、個人番号カードを取得した本人が注意しなくてはならないことと、個人情報を扱う行政側の人間が徹底して守らなければならないことがあります。
制度の導入にあたっては、行政職員には、庁内の体制や仕組み作りを徹底させ、厳重な防止策を講じていただきたい。
・個人向けには、「通知カードだけでもできること」と「顔写真入りの個人番号カードをとるとできること」をはっきりわかりやすく記載し、自治会の回覧や市政だよりに載せて周知を徹底していただきたい。また、
・自分以外の人が情報を知りうる可能性があるため、通知された番号や個人番号カード、暗証番号の取り扱いには十分注意すること、プライバシーの保護のために自分でできることなどを啓発していただきたい。
・個人情報を取り扱う立場の人には、情報を取り扱う際に持つべきモラルや業務遂行上のルールについて繰り返し研修を受け、また日常業務のなかでもチェックを怠らず、市民のプライバシーと人権を守れるように業務にあたっていただきたいと思います。
また、DV被害者が住民票を移さないまま避難先に暮らしていて、個人番号の通知が住民票のあるDV加害者の手元に届いてしまうことが考えられます。居所情報登録をすれば回避できるのですが、手続きが間に合わず加害者に個人番号が届いてしまい、被害者側にさらなる被害が生じるような事態は避けなければなりません。議案質疑の際に「DV加害者により個人番号の悪用等があった場合は、番号の変更により対応ができる」との答弁をいただきましたが、できる限りDV被害者本人が自分の個人番号通知カードを受け取れるよう周知を徹底していただきたいと思います。

次に、議案第121号・千葉市老人福祉センター及び老人デイサービスセンター設置管理条例の一部改正についてです。

議案第121号は、条例を改正し、中央区・花見川区・美浜区の3区にあるいきいきプラザ内の老人デイサービスセンターを廃止するものです。
民間のデイサービスセンターの数が増えて、市がデイサービス事業を行う役割を終え、今後は社会福祉事業団の自主事業となるということで、今まで働いていた従業員や、利用者には影響は少ないと考えられることから、議案には賛成いたします。
しかし、
社会福祉事業団の自主事業となった後、経営が継続するのか。利用者に不都合が生じることはないのか。平成26年度のデイサービス利用者は、3か所で70人と、定員の95人を大きく下回っており、利用者を増やしていくことも含め、事業の安定継続に向けてしっかりと指導していただきたく思います。
また、10年後の平成37年には日本では3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になるという、いわゆる「2025年問題」を見据えて、市は地域福祉事業をどのように進めていくのか。という大きな課題があります。
地域包括ケア体制構築のため、庁内連携はもちろん、市民団体や関連事業者とも連携し、進めていくようにお願いいたします。

次に議案第128号・工事請負契約について(旧千葉市立高浜第二小学校跡施設校舎大規模改造工事)です

学校統廃合により廃校となった旧高浜第二小学校の跡施設を活用し、1階には障害福祉サービス事業所、1階の一部と2階は療育センターのふれあいの家、3階は千葉大学サテライトキャンパスが入る複合施設として大規模改造工事をするとの工事請負契約議案です。
これまで地域の拠点であった小学校の跡施設を活用して、複合事業が開始されることで、地域住民やふれあいの家の利用者、千葉大学ほか施設関係者の期待は大きいと考えます。
また、ふれあいの家のさらなる機能拡充が図られるという面から、本議案には賛成するものです。
ただし、サテライトキャンパスの活性化と、事業の継続性について一言申し上げます。
先日の議案質疑では、「昨年度中には、高齢社会における地域の災害対応の課題や災害対応計画づくりについて、市民と学生がフィールドワークやグループワークを通じて学ぶ、『安全・安心な地域づくり担い手養成講座』といった研究活動や、NPO法人との協働などを含む、地域貢献活動が実施され、延べ900人を超える、子どもから高齢者までの幅広い市民や学生が参加した」との答弁をいただきましたが、これからも学生と地域住民が集い、地域の課題解決にむけての研究や実験を行う場として活性化するためには、千葉大学が今までのサテライトキャンパスの使い方を振り返って何を課題と考えているのか。今後どのように使っていこうと考えているのか。また、千葉市では何が協力できるのか。を十分協議していく必要があります。
千葉大学がサテライトキャンパスを位置付けているCOC事業は29年度までということですが、その後もたとえ千葉大であろうとなかろうと、地域住民の学びの場の拠点となっていくことは必要だと考えますので、今回の改修時にこれまでの事業を千葉大学とともにしっかりと分析し、今後に向けて必要な改修を検討する必要はあったかと思います。
サテライトキャンパスについては、千葉大学と十分協議をし、現状の課題も把握しながら、地域住民も加わって今後ますます活発な活動が展開されることを期待します。
また、1階部分に入る障害者福祉サービス事業所については、適切な公募がなされ、地域に理解され求められる事業が展開されるよう求めます。
今回、議案質疑で「本施設のエレベータはサテライトキャンパスの利用者も使用する可能性がある」ということを指摘させていただきました。今後、今回のような複合施設を設計する際には、子どもや高齢者、障がい者など、多様な立場の市民が施設を利用することをあらかじめイメージできていなくては困ります。今回、エレベータの設置が追加できないなら、高齢者や障がい者、サテライトキャンパス利用者の動線の確保ができるよう、十分検討することを求めておきます。

次に
議案第130号・工事請負契約について(旧千葉市立磯辺第一小学校解体工事)及び
議案第131号・工事請負契約について(旧千葉市立磯辺第二中学校解体工事)についてです。

学校統廃合により廃校となった旧磯辺第一小学校については、校舎等の施設を解体したのち、千葉県企業庁にその用地を返還する。旧磯辺第二中学校については、校舎は解体し、屋内運動場とグラウンドをスポーツ広場として活用する。また一部を高齢者施設建設用地とする。という議案です。
市の持つ固定資産を整理していくという面から。また、スポーツの拠点と高齢者福祉の充実、という地域のニーズにこたえていることから、本議案には賛成します。しかしながら、入札が適正であるのか、については疑問が残ります。本件は2件ともそれぞれ3社が入札に参加していますが、うち1社は無効、1社は予定価格超過であったため、実質的には価格面での競争がありませんでした。このような競争がない入札が成立してしまうことについて、市民は疑念を抱くのではないでしょうか。入札予定価格に対する落札価格の落札率が97%以上であることについて、当局は高くないとの認識でしたが市民は納得するでしょうか。
また、同じ業者が同時期に行われる事業を落札することで工事の質が担保されるのかということについても懸念が残ります。工事遂行へのしっかりとした監視を求めます。
また、2校の工事現場の距離は500mとかなり近接しており、周辺住民への影響は多大であると思われます。
学校解体工事現場の近隣で生活する市民の日常生活への影響は、騒音や交通などの面で計り知れないものがあります。工事車両が行き交うのは、児童生徒の通学路であることや、近隣の公民館利用者や車の出入りにも配慮して、事故が起こらないよう万全の予防策を講じていただきたいと思います。

最後に、発議について意見を申し上げます。
 発議第7号、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部改正についてです。

  この条例改正の趣旨は理解できるところがあるものの、障がい者への医療費の現物給付制度が先の第2回定例会で実現し、10月から新制度が始まるところであり、まずは制度の運用状況を注視し、当事者が制度を利用してどう感じたかの意見を聴取し、さらに実状にあった制度に変えるため検討をしていくことが望ましいと考えています。そこで、現時点では、賛成しかねるという結論になりました。

以上で、市民ネットワークの討論を終わります。御清聴ありがとうございました。

 

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