討論

山田 京子

市民ネットワークの山田京子です。会派を代表し、今定例会に市長より提案されました平成24年度千葉市一般会計決算をはじめとするすべての決算議案を認定する立場から討論いたします。
熊谷市長2期目になって初めての決算議会はまさに1期目4年間の市長のリーダーシップのもとでの財政運営実績を大枠で捉え、今後の4年間への展望を推し量る重要な節目の決算審査でした。私たちは4年間の流れを見ながら、24年度の予算編成時に立てられた、真に必要な分野に特別枠を設けての重点配分、防災減災事業への切れ目ない実施という基本方針のもとに、事業がしっかり執行されているかを中心に24年度決算を検証し、概ね確認ができたこと、今後の健全な市政運営への展望が見えつつあることから、認定としたものです。
それでは以下、具体的に、評価した点や留意していただきたい点などを申し上げていきたいと思います。

□財政運営と財政再建について

平成24年度の予算編成は、23年3月11日に起きた大震災の影響を色濃く反映し、防災や減災を意識したものであったと言えます。震災復旧に関しては24年9月に完了しており、実際に被災され、影響を受けられた皆さんは大変な難儀を強いられたかと思いますが、住民の皆さんの協力を含め、官民一体となった復旧がなされたと感じています。
千葉市の24年度決算においては、震災に係る震災復興特別交付税が減額になったこともあり、地方交付税は前年度より約61億円の減、市税収入は、家屋の評価替え等による影響で、固定資産税、都市計画税が減少したことにより約14億円の減となっています。こういったマイナス要因を抱えての予算執行となりました。
そのため、交付税増の影響で、市債管理基金からの借り入れ20億円を回避した上で実質収支が16億9,000万円の黒字となった23年度から一転、24年度は、当初予定していた基金への返済20億円を実施することが出来ず、5億円の償還にとどまりました。財政健全化プランの中で、24年度から毎年度20億円の返済をうたっているにも関わらず、返済計画初年度でのつまずきは、プランそのものの信頼性を揺らがすことにもなります。今年度作成予定の新たなプランにおいては、しっかりとした目標設定をして頂きたく思います。それとともに数年後には1,000億円を超える市債管理基金の運用に関しては、慎重を期すことを求めておきます。
財政再建の柱の一つである借金残高の推移を見てみると、全会計の市債・債務負担行為の年度末残高は、前年比196億8600万円減の1兆970億円となっています。100億円規模での減少が続き、人口一人当たりに換算すると利子含めて128万円の借金を背負っていることになりますが、5年前の19年度決算では144万円であったことを考えると、堅実な減少傾向にあると言えます。
健全化判断比率4指標では、前年度と比較し、実質公債費比率は、1.0ポイント減の19.5%、将来負担比率は7.4ポイント減の261.1%となっています。わずかではありますが好転しており、実質公債費比率は、16%未満という起債自由化の域に達する行程も見えてきました。ただし、政令市平均はそれぞれ11%、126%であることを思うと、まだ道半ばであることは認識しなくてはなりません。
連結実質赤字比率については、2.59%です。この比率を発生させている大きな要因である国民健康保険事業特別会計は、単年度収支は黒字となり、累積赤字は1億7200万円減少したものの、116億2600万円もの多額となっています。ここまで累積を大きくしたのは、平成21年、22年と赤字補てんのための一般会計からの繰入れを行わなかったことによるものであり、この数字を早期に解消することはもはや難しく、今後は、アクションプランに沿って単年度黒字化の努力を続けるとともに、一般会計からの繰り入れ規模のバランスを見きわめるべきと考えます。
「自治体会計の見える化」をすすめる公会計制度の改革も進んできました。千葉市では平成20年度決算より総務省「基準モデル」による財務4表を作成、公表しています。直近のデータによると、市民一人当たりの資産は328万円、負債138万円、純資産190万円、行政コスト45万円となっています。総資産のうち返済義務のない純資産の割合は58%となっており、この割合が低ければ、将来世代が資産形成コストを大きく負担する、すなわち将来世代への借金のつけ回し、ということになろうかと思われます。数値の考え方は、全国統一したモデルでの試算が行われ明らかになってくるかと思いますので、今後の動向を注目したいと思います。
市長マニフェストでうたわれている「行政コストの可視化」では、平成27年度には保育所や家庭ごみ収集などの公的サービスにおいて、自分が負担している公共料金に対してどのくらいの行政コストがかかっているかが分かるサービスが始まるようです。財務4表を作成するためのデータが、そのもととなります。
市民が情報をしっかりと得ていく環境を整備することは、行政サービスとして重要なことです。加えて、得た情報により、市民が行政を身近に感じ、当事者の一員として評価していく環境を作っていくことが、さらに大切な課題です。専門家も交え説明を受ける中で、市民が議論出来る、そんな仕組みも検討下さい。

□債権管理について

市税を除く滞納額が増加傾向にある現状を踏まえ、市は平成23年度に債権管理の状況について市役所内外での調査を行った結果、処理基準の不統一、専任職員の不足、債権回収のノウハウの不足などの課題が明らかになったことから、24年3月に千葉市債権管理条例を策定し、効果的効率的な債権管理が始まりました。
その結果、24年度に債権放棄を行った債権は、合計3304件で3億5624万円にも上りました。
滞納債権は全部で100種類ほどあり、今回はその一部で、そのほかの債権についても徴収に向けた努力を行っていると聞きました。
また、非徴収債権については滞納整理のノウハウのある部署が少なく滞納額が高額で推移しているとのことで、研修や職員の資質向上に努めているとの事です。
今後の債権放棄を防ぐための対策として、コールセンターや債権回収会社への委託拡大、新たに弁護士や司法書士を活用した民間委託の導入を推進するとの事です。
効率的、効果的に債権管理を進めることは望ましいことではありますが、悪質なものを除いては、それぞれに事情があっての滞納です。
民間委託で、ますます事務的な処理が進むように感じますが、市民の生活状況をしっかり把握し、払う側の事情・心情に寄り添った誠意ある徴収に努めていただきたいと思います。

□防災対策について

24年度は地域防災計画の見直しという大きな仕事がありました。
過去の計画は、地震や豪雨など、それぞれの災害に応じた対策を立てて寄せ集めた印象でしたが、東日本大震災を経て、共通する課題、追加しなければいけない課題が山積みで、本当なら、膨大な計画を根本から組み立て直す必要も感じた見直しでした。
その中で、私たちが何度も申し上げてきた男女共同参画の視点が計画の中に盛り込まれたことは大いに評価したいと思っています。
地域防災会議の委員の女性の比率が低いことにについて指摘してきましたが、女性部会を設けるということになりました。真に、女性の立場からの有効な提言が得られ親会議に活かされることを期待しています。
また、避難所運営がいかに大変かが、東北の事例で浮き彫りになり、いつ千葉市にもやってくるかもしれない大震災にそなえ、地域住民の協力のもと、準備が進むよう計画に盛り込まれたことは評価したいと思います。
さて、それをいかに地域の中で実践するかが問題ですが、
すでに避難所運営委員会がたちあがっているところもあれば、全くないところ、地域の中に自主防災組織もない、さらに、自治会もないところもあり、温度差が激しいのが実情です。
私自身も地域の中で防災のグループを作ってみて、地域の人たちの理解を得て、全体の底上げをはかるのにいかに時間がかかるかを実感しているところです。
今後はやる気のある人たちが、動きやすいように、ハード面の補助だけでなく、人的な支援を広げていくかがカギとなるように思います。
防災ライセンス制度も今、検討中と聞いています。96万市民に防災意識の向上と備えが広まるよう、この制度にも期待しています。
また、来年度からは男女共同参画課でも防災講座の開催に向けて構想を練っているとの事です。特に男性には、男女共同参画の視点が大事なことを理解していただき、防災に関心のある女性たちが地域のリーダー層となれるよう、事業の展開をはかることを期待しています。
拠点的福祉避難所については、24年度に116か所を指定したとのことで、第1段階として、良かったと思っています。しかし、まだ、災害時にどう動くのかの訓練もなく、何も協議がされていないようですので、施設側との協議を速やかに進めてください。
避難所の運営に関しては、私たちが、ハグをやってみて、とにかくまず、初動体制が大切だと感じました。

ハグというのは、避難所のH 運営のU ゲームのGの略で、静岡県が開発した模擬体験ゲームです。避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。プレイヤーは、このゲームを通して災害時要援護者への配慮をしながら部屋割りを考え、また炊き出し場や仮設トイレの配置などの生活空間の確保、視察や取材対応といった出来事に対して、思いのままに意見を出しあったり、話し合ったりしながらゲーム感覚で避難所の運営を学ぶことができます。
このゲームを通して、特に上下水道が止まった時のトイレ対策が大変だということを実感しました。また、障がい者、高齢者、外国人、ペットの避難をあらかじめ想定しないといけないと実感できました。
避難所運営委員会の立ち上げもまだ時間がかかりますが、こうした疑似体験も含めた避難所の準備をどこの地域でもできるよう、特に区の特性を生かした支援をお願いします。私たちも、行政任せにせず、良い取り組みについては自らが取り組んだり、広くお知らせしていきたいと思っています。

□あんしんケアセンター

これまで12か所であったあんしんケアセンター(地域包括支援センター)が倍増したことは、何といっても大きく評価出来ることだと思います。私たち市民ネットワークでは、その効果をきちんと評価したいと、全24か所のあんしんケアセンターへの聞き取り調査を実施ました。
そこで見えてきたいくつかの課題に関しては、代表質疑において伺い、市としても区保健福祉関連部門との連携のあり方などの課題を認識されていることを確認しました。
対応として、あんしんケアセンターが、地域ケア会議等を通じて行政や地域の関係者と情報を共有するとともに、必要に応じて成年後見支援センターや認知症疾患医療センターなどとの連携を進めることや、市としても、保健福祉センターとあんしんケアセンターが緊密に連携して困難事例に対応できるよう、合同事例検討会や成年後見制度の研修会を開催し、職員のスキルアップを図っている、とのことで、今後に期待をしたいと思います。
国では、社会保障制度改革国民会議の報告を受け、社会保障審議会介護保険部会で、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となって医療・介護ニーズがピークとなる平成37年度(2025年度)に照準を合わせた介護保険法改正の議論 が本格化している、とのことです。
最終報告書に、現行の要支援者に対する介護予防給付を、市町村の実情に応じ、新たな地域包括推進事業に段階的に移行させていくべき、と記載されており、関心を集めていますが、同時に「地域包括ケアシステムの構築」についての検討の中では、地域包括支援センターの業務が非常に多くなっていることから「地域包括支援センター」職員体制の業務量に応じた適切配置及びセンター間の役割分担や従来とは別の枠組みによる人員体制の強化なども検討の俎上に上っていると聞きます。
千葉市としてのあんしんケアセンターの配置状況は未だ国が求めていた基準には達しておらず、今後更なる充実が求められています。国の動向にも注視しつつ、あんしんケアセンターとともに区の福祉関連部署の職員のレベルアップに努めて下さい。

□粉じん対策について

千葉市の沿岸部を中心に訴えの多く出ている、黒い粉じん対策については、環境省が策定した「新しい地域パートナーシップによる公害取り組み指針」の考え方を踏まえるという24年度に示された当局の方針を評価するものです。
この指針の基本的な考え方はというと、事業者が公害防止関係法令を順守し、自治体が規制・指導・監視を行うという従来の体制に加えて、地域における事業者・地域住民・地方自治体の3者が情報共有と、コミュニケーションを通じて信頼関係を築き、その相互信頼に基づいた3社の協力関係によって、「公害のない、より良い環境を目指した地域づくり」のための取り組みが行われることを目標としています。そのため、この取り組みは強制的に行われるものではなく、あくまで事業者・地域住民・地方自治体により、自主的にすすめられることが期待されるとのことです。

事業者のあり方としては、
@予防的公害対策への自主的・積極的な取り組み。
A潜在的な環境汚染リスクや公害防止に関する情報の公開。
B工場見学や3者会合等をとおしての、地域住民や地方自治体とのコミュニケーションの促進および信頼関係の構築。
が挙げられています。

地域住民のあり方としては、
@工場見学や環境イベントへの積極的な参加および事業者や自治体とのコミュニケーションの促進。
A身の回りの環境に関してモニタリングと事業者や自治体との結果の共有。
Bグループとしての観察や簡易測定による住民の関心事項の共有と取り組みへの直接反映。
C助言者・解説者として公害防止対策経験者等の意見交換の場への積極的な参加。
が挙げられています。

地方自治体のあり方としては、
@規制、指導・監視に加え、事業者と地域住民を結ぶコーディネート。
A事業者による地域住民・地方自治体への積極的な情報公開の促進と自らが持つ情報の公開。
B公害防止対策経験者から助言をうけること。
C他の自治体との積極的な情報交換。
が挙げられています。

これらの指針を聞いても、「早く粉じんを何とかしてくれ」という思いの住民にとってはまどろっこしく感じるかもしれません。しかし、お互い自己主張だけし合っていても、前には進みません。この指針を理解してもらい、市民の取り組みやすいモニタリングから始めて、お互いの情報共有を図り、信頼関係を築いていくべきです。
いつもわたしたち市民ネットワークが申し上げている市民参加と情報公開が、解決のカギだということです。
千葉市が、全国に誇れる新しい地域パートナーシップによる公害防止のパイオニアになるよう、息の長い取り組みをお願いしたいと思います。

□子ども施策について

▷障がいのある子どもの地域での育ちについて

障がいのある子どもも地域住民の1人です。障がいのある子どもに特化した特別支援教育を望む保護者もいますが、一般の子どもと同じように、希望すれば幼稚園にも入れるようにしていくべきです。それが、将来も地域で暮らしていく基礎となるからです。
先の大震災の実例から災害時の障がい者に対する支援を考える時、いかに日常的に障がい者が地域の人と交流できているかがいのちを救うことに大きく影響するかを感じました。
小さい時からいろいろな人と付き合っていくことが、健常者にとっても大事なことです。自分と違うタイプの人を排除せず尊重することを、小さい時から学ぶべきと思います。
千葉市では現在障がいのある子の受け入れをすべての保育所で行っており、高く評価するところです。幼稚園についても県の補助に加えて、障がい者手帳のある子どもに関しては幼稚園に対し補助が出ていますが、補助を受ける園の数は伸び悩んでいます。
そのための課題は、幼稚園側の認識を変えていくこと。変えるには、国や県、市からの金銭的、人的支援がさらに必要なこと。また障がいに対する親の認識を変えることだと思います。そして、当面の対策としては親が働いていなくても保育所に入れるようにすることも必要ではないでしょうか。
幼稚園側といっても、経営者と、現場の保育者の認識も少し違います。
現場の保育者は日々悩みながら障がいのある子に対応しています。
ぜひ専門家の巡回相談がかなうようにして下さい。
幼稚園の経営者の方には、ほかの子どもたちのためにも障がいのある子を受けいれて、一緒に育てていただきたいこと、さらに保育者が積極的に障がい児教育の研修を受けられるよう配慮していただくことを望んでいます。
親の中にはわが子に障がいがあるということを認めたくないために専門家に相談しない方もいると聞きますが、専門家からの助言があれば、その子にふさわしいコミュニケーションの取り方、対応の仕方を学び、親も周囲も、「手のかかる子、困った子」と思わずに済みます。各幼稚園での親御さんとの信頼関係作りがまず必要と思っています。
市にたいしては、境界域の子ども等、障がい者手帳がないが気になる子どもが幼稚園に居る場合に補助金がもらえるような仕組みをつくること。療育センターの職員を増員して、幼稚園への巡回相談をおこなうことを強く求めておきます。

▷放課後子ども教室について

代表質疑で放課後子ども教室の事をお聞きしました。
昨年度はコーディネーターの横のつながりを作るため連絡協議会を作ってくださったことは評価したいと思います。今後は開催日数を増やすことを考えていくとの事ですが、そのためにも、担い手を地域の中にどうやって増やしていくのかが課題です。
文科省より補助金が出ているために、教育委員会の所管ですが、地域の人材を活用し、子どもの健全育成をはかる観点から放課後子ども教室は子ども未来局が中心となっておこなうことの方が、ぴったりするようにも思います。
子どもの実態を知り、どんな風に寄り添うとよいのかの研修は共通するものがあるので、これからは、さらにぜひ子どもの居場所作りの事業は子ども未来局との連携を図り、人材育成にも力を入れて欲しいものです。

以上、様々ご意見を申し上げてまいりましたが、近日中に市民ネットワークの平成26年度予算編成に向けての要望書を提出する予定です。市民と共に一生懸命考えた提案を真摯に受け取っていただき、次年度の施策に反映していただくことを求め、討論を終わります。

 

 

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