討論

山田 京子

市民ネットワークの山田京子です。
会派を代表し、今定例会に提案された、すべての議案に賛成の立場を、そして発議第10号に反対の立場を表明するものです。なおいくつかの議案について、指摘したいことがありますので、以下申し上げます。

◆議案第72号 専決処分 平成24年度千葉市国民健康保険事業特別会計補正予算

118億5000万円の収支不足を生じ、5年連続の繰り上げ充用を専決処分とした国保ですが、これまで続いていた単年度収支の赤字から脱し、23年度の決算見込み額が約11億円改善するとのことです。
その要因としては、前期高齢者交付金収入が前年度より増えたということが大きかったようですが、市税等納付推進センターからの電話催告で初期段階の未納者対応を強化したことも評価できると考えます。
23年度は電話が通じた12000件のうち7600件が納付を約束し、翌月末までに納付されたのが3000件と聞き、初期対応の重要性を感じました。

今後、アクションプランをしっかり実行することで、単年度の収支は改善されるかもしれませんが、つもりにつもった累積赤字の改善は、国保単独の努力だけで解消されるとは思えません。
根本的には国レベルの、制度の改善が必須です。

国保の利用者は高齢者が多くて低所得であるという構造が変わらない限り、いま検討されている、県レベルでの広域化は、抜本的解決にはなりません。
国からの補助を大幅に増やし、全部の健保団体を一元化するしか方法はないという有識者の意見にはうなずけるものがあります。

しかし、制度の改正には長い道のりが必要とおもわれ、国に要望を上げながらいまできることを各自治体がコツコツと進めていくしかありません。
その中で、保険料の値上げで健康を損なう人が増えることのないよう、各世帯が、どのような暮らしをしているのかしっかり把握していく必要があります。

大阪府門真市では、2009年に三重短期大学と大阪市社保協が連携して国保世帯の調査を行いました。2日間で504人の調査員が32の項目について約1万世帯の地域を対象に聞き取りをしたそうです。800以上の調査票が回収されました。

調査報告からは、「こんな調査をやってほしかった、待っていた」という人がたくさんいたこと、国保制度の仕組みについて理解されていないこと、国保料が高いのはあたりまえだと考えている、考えさせられている現実があること、国保料と介護保険料を捻出するために食費を削るという声が多かったこと、医療費が払えず、医療中断している人がいることなどがわかりました。研究者からは、足を運んで話を聞くこと、「待ち」より出向くことの重要性が指摘されていました。
千葉市でも、各世帯の生の実態を直接出向いて把握することを提案したいと思います。

 

◆議案第75号 平成24年度一般会計補正予算 和解 および 議案84号 和解

千葉市村田町にある衛生センターでおきた、不正な契約事務に関する案件です。
本来なら、別発注すべき工事をプラント設備工事に含めて発注したため、契約を無効とし、市が相手方の会社に工事代金を和解という形で支払うことについての議案です。

通常では考えられない行為でしたが、これは、市の出先機関のありかた、職員体制を考え直すきっかけになったともいえます。
当該センターは少人数で、本庁とは離れたところにおかれており、仕事のやりがいや、緊張感は果たして持続していたでしょうか。少人数の職場環境にありがちなマイナス面が、折り重なってでてきた案件ともいえるのではないでしょうか
また、財政難もあって職員の増員ができず、民間委託などで中堅層の技術者不足が生じ、若い世代への技術の継承がしっかり行われているかどうかも懸念されます。

今後に向けては、自主点検の強化、業者選定の審査機能の強化、経理審査の徹底、契約書類の差し替え防止策、契約情報の窓口閲覧の徹底などの改善案が示されました。
しかし、単に監視するということではなく、たびたび本庁職員も出向いて問題があればいつでも相談にのれるような、風通しの良い職場、信頼関係のある職場となるよう取り組んでいただきたいと思います。

◆議案76号 千葉市東日本大震災復興基金条例の制定

昨年10月、国は、東日本大震災からの復興に向けて、被災団体が地域の実情に応じて、住民生活の安定やコミュニティの再生、地域経済の振興・雇用維持等について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的かつきめ細かに対処できる資金として、復興基金を創設しました。千葉県を含む特定被災地方公共団体である9県が、基金を設置することとなる場合に特別交付税により措置する、というものです。
基金を具体的にどのように使うのかは、各県の判断に委ねられています。きめ細かな事業を実施するという基金の趣旨からも、市町村事業に十分に配慮した運用を期待する、とされました。総額は1960億円。大変大きな被害のあった、岩手・宮城・岩手への措置額は大きなものとなっています。
千葉県も被災県であり、昨年12月に国から措置された特別交付税30億円を原資に「がんばろう!千葉」市町村復興基金を創設し、24年度25年度の2カ年にわたり、県内全市町村対して交付金を交付します。
今回の議案は交付金を積み立てる基金設置の条例制定にかかわるものです。

もともとの復興基金の創設は、国や県の公的な補助が十分でなかったり、補助対象外だったりする事業にも基金から資金を支出することで、支援の「すき間」を埋めることが出来るようにするものであり、公的補助が出しにくいと言われる民間への支援も考えられるなど有意義な活用の可能性が広がると思われます。
活用については被災団体である県の判断によっており、被災した市町村に限定して配分する、あるいは国からの特別交付税額の2分の1を市町村に配分して残りを県事業に充当するなど、それぞれの団体で、より有効に活用方法が考えられています。
千葉県の場合は、人的被害や建物被害など被災状況に応じて配分する「被災割」を基本に、市町村一律の「均等割」と高齢者人口、障害者数による「人口割」での配分を行っている、とのことです。
千葉県内には、今回の震災でほとんど被害のなかった市町村もあることを考えると、市町村一律の均等割りで県内全市町村に2000万円合計10億8000万円が配分されることに、若干の違和感を覚えます。
県の基金創設のおりには、千葉市にも配分指標・指標ごとの配分額などについて、意見照会があった、とのことですが、千葉市からは特に意見の提出はしていない、とのことでした。県の基金の交付に関してのことなので、千葉市としても意見はしにくいところかと思いますが、いかに財源を有効に使うか、選択と集中が必要なわけですので、均等割りはいかがなものか、といった意見を提出しても良かったのではないかと思います。
しかしながら、千葉市内においては、美浜区を中心に液状化による大きな被害がありましたので、地域のご意見をしっかりと伺いながら、生活再建に向けての有効な活用を検討していただきたいと思います。

◆議案第79号 千葉市印鑑条例及び千葉市証明書等手数料条例の一部改正

住民基本台帳が一部改正されるとともに外国人登録法が廃止になることからこれに関係する条例の規定を改正するものです。

法律の改正に伴い、本市の印鑑条例や手数料条例の改正が事務手続き上必要なことは理解できますので、この改正案には賛同いたしますが、そのもとになっている、新しい在留管理制度が今年7月9日からスタートすることについて、外国人のみなさんに制度の内容が果たしてよくつたわっているのかを懸念しているところです。

従来、非正規滞在者についても外国人登録の対象になっていましたが、新制度により、対象から外れます。したがって、これまで、受けられていた、学校教育、母子手帳の交付、入院助産など、こどもの学習や命にかかわることについて、名簿がなくなることに伴って、行政サービスが届かなくなる恐れがあります。
住民登録対象外の外国人に対する行政サービスが後退することがないよう、必要に応じて記録することが文書で国から求められているわけですが、千葉市は、市として独自記録をつくるのではなく、関係機関ごとに対応するとのことで堂もはっきりしません。
非正規滞在そのものは、望ましいものではありませんが、罪のないこどもの命にかかわることなどについては配慮し、記録は継続していただきたいと考えます。

また、例えば、在留期間が最長5年に延伸されたことの半面で、住所の変更を90日以内にしなかった場合や、正当な理由なく配偶者としての活動を6カ月以上しなかった場合、在留資格が取り消されます。
このような重い罰則があることをしらないために、悪意のない方でも思わぬ事態に陥ることがないでしょうか。

法律を作っている国が周知すべきと言うかもしれませんが、国から、各個人へのお知らせなどありません。地方自治体は、そこに暮らす住民の生命や人権に配慮する役割があると思うのです。そのために、この制度改正の十分な周知を行う必要があります。

しかし、6月8日に発送された仮住民票の説明書を見ますと、新しい制度に伴う注意すべき事項や罰則規定は書かれていませんでした。よほど熱心な人でなければ、国のホームページをあけてみることはないでしょう。
外国人あての通知も、英語、中国語、韓国語、スペイン語の4ヶ国語のみです。
国から送られてきたポスターも、数が限られているほか、詳しい制度の内容はかいてありません。

川崎市では多文化共生施策検討委員会での説明会を昨年から始めたり、福岡市では、地元多言語エフエム放送での広報、新潟市では外国語情報誌への掲載をするなど、従前より多角的広報に努めている自治体もあります。しかし、千葉市では7月9日からはじまる改正については直前の7月1日の市政だよりが初めての大きな広報です。日本人でさえ、制度の改正というものは、なかなか周知が難しいものですから、まして、外国人の方は、そう簡単に、制度改正をキャッチすることは簡単ではないと思います。

各外国人への通知文はすでに郵送ずみとのことなので、新たに詳しいお知らせをすることはむずかしいかもしれません。しかし、外国人の行きそうな場所にポスターをはっったり、ちらしを置く、説明会を開くなどいろいろ工夫はできると思います。それでも今後、何かトラブルがあった場合には、市として誠実で丁寧な対応をするよう求めておきます。

◆発議第10号 千葉市障害者雇用対策検討委員会設置条例

条例の目的は障害者雇用の促進を図るとあり、その方向に進むこと自体は賛成するものですが、そのための望ましい方法が、検討委員会の設置なのかは疑問です。
現在すでに千葉市障害者職業能力開発推進会議が設置され、関係者が集まって、障害者の就労に関する協議や検討が行われていると聞いています。さらに、いま、課題と考えられるのは、職についても、定着せずやめてしまう事であって、きめ細やかな、当事者に寄り添った指導が不可欠で、そのための人材育成に力を入れるべきと考えます。
したがって、検討のための委員会を設置することは、目的を達成するための一番の方法とは考えられず、本発議には賛同しかねるものです。

以上、市民ネットワークの討論といたします。

 

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