討論

福谷 章子

市民ネットワークの福谷章子です。会派を代表しまして、平成20年度千葉市一般会計決算、国民健康保険事業特別会計決算、後期高齢者医療事業特別会計決算、市街地再開発事業特別会計決算、水道事業会計決算に不認定の立場から討論を行います。

平成20年度は、サブプライムローンを発端とするアメリカの金融危機によって、理論上膨らませてきた債券資産と実態経済との乖離が顕在化しました。 世界的な不況は千葉市内にも影響を及ぼし、その対応が求められる年でした。 千葉市においては、第2次5か年計画の大幅な見直しという急ブレーキがかかり、さらに各種料金の値上げなど、日々の市民の暮らしに大きな影響を及ぼしました。 このような厳しい財政状況の中で、日々の市民生活が豊かに送れるよう、不要不急な事業に関しては、大幅な計画変更が求められていたにも関わらず、大型の公共事業が一時的に先送りとされながらも、用地取得など国が示すままの基盤整備が行われ、自発的な見直しは進みませんでした。 また、平成20年度は、平成21年4月22日に収賄容疑で逮捕され、その後起訴された鶴岡前市長が予算執行を行った最後の年でもあり、逮捕起訴という事実と容疑内容をもってすれば、それまでの契約が果たして公正なものであったのかどうかという疑念をぬぐい去ることができないのは、非常に残念です。

このような状況において、私たち市民ネットワークは、財政運営に無駄は無かったか、安全への配慮は十分であったか、人権は尊重されたか、各種施策に市民の参加は十分に図られたか、という点を重視して決算審査を行いました。

財政運営に関しては、 歳入面では、市税収入は1782億円で、徴収率も前年度よりわずかに上回ってはいるものの、当初掲げた目標の93.3%を達成できず、政令市平均95.4%をも大きく下回って依然として政令市最下位です。かねてより千葉市は滞納繰越分への対応が課題となっており、徴税職員の人員配置など、状況を見据えた徴税対策がより求められるものと考えます。 歳出面では、公債費の増加により義務的経費の割合が52%と前年度に比べて5.8%増加し、経常収支比率は96.3%と、相変わらず自由度の少ない厳しい状況となりました。
そんな中で、実質収支3億7千万円の黒字を確保したものの、これは、市債管理基金から15億円を借り入れ、さらに、20年度に償還すべき20億円を先送りしてやっと確保されたものでした。 千葉市の財政を圧迫してきた市債発行は、公債費負担適正化計画によって、20年度当初予算では前年比44.2%減の350億円ですが、決算では、減収補てん債46億円、臨時財政対策債89億円を含む402億5,000万です。 その結果、市債残高は、平成19年度末の1兆790億円より減少する予定でしたが、それも先送りとなり、20年度末では1兆809億円と増加しています。
一方、財政調整基金をはじめとする積立金は103億円から88億円へと減少し、千葉市の財政状況はますます厳しい状況に陥ることとなりました。 それでも、財政健全化法による健全化判断比率は、いずれも早期健全化基準を下回りましたが、基準を下回ったからといって千葉市の財政状況が改善したわけではなく、昨年に引き続き、実質公債費比率が20.1%で政令市中ワースト2、将来負担比率が309.6%でワースト1となっています。 以上のような状況に至らしめた責任は大きいものです。

次に、施策に関して、特に指摘すべき点に関して申し上げます。
雇用対策についてです 総務省が2日発表した8月の完全失業率は、5.5%で過去最悪となった7月より0.2ポイント改善したものの 失業率の水準はなお過去最悪とのことです。また厚生労働省が同日発表した8月の有効求人倍率は、正社員が前年同月より0.28ポイント低い0.25倍と低水準で 4人で1つの椅子を奪い合うという構図の雇用情勢は依然危険水域にあると報道されていました。 雇用に関しては依然として厳しい状況は変わっていません。 昨年千葉市では雇用対策として、緊急就職・労働相談のほか、離職者等を対象とした臨時職員への雇用や 住宅支援として市営住宅等の提供などに取り組まれました。 しかし臨時職員への雇用は、募集を行ったものの要件を緩和しても100人枠に対し応募は30人弱と少なく、有効な対策になっているとは思われません。 また住宅支援として、市営住宅5戸、特定優良賃貸住宅10戸が提供されましたが、市営住宅は浴槽の持ち込みに15万円もかかり、住むところを失った方が借りたくとも負担が大きすぎ、離職者の住宅支援とはなっていません。見直しを求めます。

DVへの取り組みについて DVの相談件数は、全体的には右肩上がりで増えています。平成20年度は虐待と一体的に支援できる要保護児童対策及びDV防止地域協議会の設立に向けて準備が進められ、表裏をなす虐待とDV対策が一体で行われることは評価できます。今後は、行政の相談窓口以外にも気軽に相談できる場を増やすことが必要です。DVを支援する市民団体と連携をしながら、きめ細やかな支援体制を整えることを望みます。

交通安全施策についてです。 保育園児から高齢者に至るまで、交通安全について学ぶ場として交通安全教室を開催していますが、千葉市ではその業務を交通安全協会に委託しています。委託費は1,780万円で開催回数は196回。1回あたり9万円相当となります。一方、小学生の自転車による事故は増えており、成果についての検証が必要です。また、中高生に対する安全教育はこの中には含まれていないことから、課題も多く、見直しが必要であると考えます。

住宅政策についてです。 公営住宅については、まずは家賃徴収率ですが、政令市最下位は脱したものの、依然とワースト2と、低い状況です。また、入居者の優先順位に関しては、住宅に困窮している人たちが適切に入居すべきですが、依然として応募倍率が高い状況にあり、住宅困窮度の高い人を優先的に入居させる配慮が必要です。また、困窮度という点では、若者やホームレスなどの単身者も該当しますが、これらの福祉的利用に対しては門戸が開かれてはいません。家賃徴収にしても、入居決定にしても困窮度の見極め、真に困っている人にきちんとした手だてを求めておきます。

公園の維持管理について 公園の維持管理費はこの3年間で約29億円から約26億円へと削減されています。 剪定や草刈りの回数も減少しています。しかし公園は高齢者から乳幼児までが利用する、生活に身近なスペースであり、安全性の確保は重要です。近年遊具による事故の報告もあります。こういった事態を受けて国土交通省では20年8月「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を策定し、各公園管理者に通知しています。ポイントは「遊具の老朽化対策の強化」と「安全点検体制の強化」です。
国では、指針策定後、平成21年度に、都市公園内の老朽化した遊具を入れ替える地方自治体に対し、費用の半額を補助する制度を創設しています。 これまで、市民ネットワークでは、こどもたちの命にも関る事なので、国の補助を待つまでも無く、自治体として独自に対応すべきことを求めてきました。 千葉市では5カ年計画の中でリフレッシュ事業として、設置が30年以上たった遊具の更新を計画的に行ってきたとのことですが、古くなってとりかえることを第1とするのではなく、日頃の安全点検の充実と、それを反映させた修繕の充実で、無駄な経費の削減を目指していただきたいと考えます。
またこれからの公園の維持管理には住民の参加が欠かせません。ただ経費削減のために住民参加を求めるのではなく、地域にある地域資源は、自らが維持管理に参加していく、という思いが大切です。草刈りや清掃だけでなく、公園設計から始まり樹木の植栽・植樹、遊具の点検パトロールなど、住民参加の場面を、工夫して積極的に提供していっていただきたいと思います。

教育委員会 教育費決算額は308億6,000万円です。これは対前年度比較では34.8%の減です。 科学館、市立高校の整備事業が終了したこともありますが、それにしてもこの間の教育費は年々減少傾向で、その影響が生じています。例えば学校の教材教具費、図書館資料費また公民館の報償費などの事業運営費は5年前と比較すると半分以下となっているものもあるなど削減額が大きく問題です。 さらに21年度予算でも教育費が20年度比較で7.3%減となっています。未来を支える子どもたちの学校現場や市民生活に密着したサービスの削減はすべきではありません。徹底した検証をし、見直しを求めるものです。 また学校施設の耐震化では、校舎をまず進めていくということで屋内運動場の耐震化が進んでいません。また建築後20年以上となる老朽化した学校施設への対策も未だ未実施のものが557棟あります。これらの改修改築にはかなりの費用が必要です。児童生徒の安全確保のため定期点検をきちんとし事故のないよう維持管理を図りつつ、災害時には市民の避難場所となるものでもあることから計画を前倒しするなど一日も早い対策を求めます。

国民健康保険特別会計の収支不足については19年度2億6,700万円だったものが、20年度は、18億4,914万円と一挙に約7倍にも跳ね上がっています。市は19年度に引き続き20年度も繰り上げ充用としました。 この収支不足の原因については、徴収率の高かった75歳以上の方が、後期高齢者医療制度に移行したことや経済状況の悪化などにより、徴収率が見込みを7.28ポイント下回り、保険料が約29億円少なかったこと、また保険給付費が予算を下回ったことに伴って、国や県からの支出金が約18億円、そして、一般会計からの繰入が約4億円少なかったことが挙げられました。 20年度は滞納繰り越し分の徴収率を22%から25.2%にアップさせ、収納額2億6,900万円から充てるということでしたが、20年度決算では、19.2%と、逆に予算を6ポイント下回ってしまいました。 この主な理由として、景気の悪化などにより分割納付の誓約を行う被保険者が増加したことによるとのことですが、徴収率の予測が過大だったことと、予測に見合うだけの徴収体制が確保できていなかったのではないかと思われます。
一方、千葉市の一人当たりの法定内繰入金額は20年度約12,000円で、政令市で最下位です。政令市平均は24,000円とのことで、千葉市が低い理由は、市が採用している、保険料軽減制度が、6割、4割軽減の2区分であるのに対し、18市中14市で7割、5割、2割の3区分になっているからとのことです。 市は、今後、3区分とすることを考えているようですが、もっと早くから、生活困窮者のために軽減割合を見直し、法定内繰入を増やすべきでした。 また、保険料減免世帯数は、他都市では、0.2〜23.9%となっているのに対し、千葉市は19年度0.2%、20年度0.6%です。 この数字を見ても、千葉市の低所得者や生活困窮者に対する対応が十分とは言えません。
さらに、保険料滞納者対して発行する資格証明書の数は20年度で1万5,914世帯、すなわち滞納世帯数の43%にものぼり、他市に比べきわめて高い割合でした。 今後は新しい市長のもと、この現状を改めていただけると期待していますが、20年度までの滞納世帯への対応は、もっと、生活困窮者の視点に立っていただきたかったと考えます。
以上、国保会計に関しては、繰り上げ充用に頼らず、大型公共事業の見直しなどで財源を生み出し、一般会計からの繰り出しを増やし、国保会計を支えるようすべきだったと考え、国民健康保険特別会計の20年度の決算については不認定といたします。

そもそも「後期高齢者医療制度」は、増え続ける医療費を抑制し、管理しやすくする狙いから、75歳以上を「後期高齢者」とひとくくりにして分類し、医療給付の抑制をしようとする国の考え方が設計の根本にあります。 平成20年4月開始後、同年7月には制度の見直し策が決定され、平成20年度・平成21年度(2009年1月〜)の保険料が軽減幅拡大の方向で見直されました。 さらに保険料の徴収に関しても、年金からの天引きすなわち特別徴収であったものが、平成21年度(2009年1月)からは、口座振替による支払が可能となり、普通徴収へ変更されました。 制度開始前から様々な問題点を指摘されておきながらスタート後も多くの変更があり、新政権においても制度の廃止がいわれているところです。 市民ネットワークでは当初から制度そのものに反対してきました。従って、この決算についても反対といたします。

20年度決算では、千葉駅西口地区市街地再開発にかかわるものが16億7,300万円です。この事業は平成2年事業認可を受け、当初の総事業費は500億円と予想されていましたが、事業の遅れなどから権利者の転出が多くなり、何回かの変更を経て、現在の総事業費は753億円となっています。 20年度は、土地開発公社が平成4年に先行取得していた70.3平方メートル11億4,900万円を含む590平方メートルを12億6,900万円で買い戻しました。これで20年度末までに取得した用地は1万339平方メートル、費やした用地費は374億1,000万円です。しかしこの土地の現在の評価額はおおむね8分の1といわれ、約51億円です。これだけでも市民には多大な損失を与えているのです。
また平成20年度は、まずは再開発ビルA棟を建設するため特定建築者制度を導入するとして、都市計画の変更が行われました。そして特定建築者の公募が20年11月に行われましたが、手を挙げかけた事業者から、事業性の目処が立たないとの理由で、事業提案書の提出を辞退する旨の申し出があり、事業者が決まらないまま、現在に至っています。 昨年秋の急激な経済状況の悪化のため、ともいわれますが、首都圏でのオフィスビルの需要がだぶついているのは、もうかなり以前から明らかにされていたことで、計画自体が現在の社会状況にあっていなかったのは明白であり、無理な計画のままで公募をかけたことに問題があったと考えます。
A棟については、権利者の入居が予定されており、速やかな建設が必要です。しかしこの事業は、現在でもB棟も含めた再開発事業となっていて 最終的にA・B両棟の建築により事業終了となります。B棟建設については、A棟及び駅前広場、道路等の整備が完了した後の社会経済状況や周囲の開発状況等を見きわめながら、整備手法について検討していく、と説明を受けていますが、これまでも指摘してきたように、総事業費753億円の財源の中には、保留床処分金137億円が見込まれており、そのうちの大部分120億円がB棟処分分とのことです。B棟を建設しても保留床の処分は大変厳しいものであることは目に見えており、建設しないという判断もあるべきです。そうなれば今一度どういった形でA棟を建設するのか、その見直しがまずは必要で、B棟建設を前提としない総事業費を洗い出す必要があります。この地域の身の丈にあった、低容積開発や、駅前広場として整備することなどの再検討を求めるものです。

市が新たな水源として毎年負担金を支払っている霞ヶ浦導水事業をめぐっては、『鮎をはじめ、自然生態系に与える影響は計り知れない』として反対する茨城・栃木両県の漁業協働組合が国を相手に訴訟を起こしています。 また民主党政権となり、前原国土交通相は計画中の全国のダムや導水事業の事業継続妥当性の見直しを表明しています。このような状況の変化の中で、事業の中止を求める動きが活発化しています。市民ネットワークはこれまで千葉市に対し、第3次拡張事業について、給水人口が計画と乖離していることを示しながら過大なる水需要予測の元での施設整備計画の見直しを指摘してきました。
今回の決算委員会では国や訴訟の動きも踏まえ、霞ヶ浦事業からの撤退や、中止された場合の負担金の扱いなど従来より踏み込んだ質問や答弁がありました。 まずは国において多大な税金を投入しての公共工事・霞ヶ浦導水事業が根拠としてきた水質浄化、首都圏の水需要の増大についての精査また現地漁民らの生活をおびやかすということについてきちんと検討されるべきです。 そして市も今後行う水需要精査を元に、県内の水道のあり方の検討委員会、また水源の活用など国県に対しても積極的に働きかけをし、現実に見合った計画となるよう見直しをするべきと考えます。

さて、将来に向けた投資という名目で、資産形成を拡大してきたために、千葉市は負の財産に苦しんでいますが、将来に向けた投資とは何か、ということを市民とともに真剣に議論し、選択していくことが必要です。 社会全体では、少子高齢化によって人口減少への流れがはっきりとし、加えて昨年秋からの経済不況の影響により、緊急雇用対策を講じても失業率は依然として高い状況です。 急激に困窮する市民へ十分な配慮をしつつ、さらなる財源確保にも取り組まなければなりません。 このような中で、各種事務事業の見直しや経費節減の影響は、市民生活のいたるところに現われていますが、市民ネットワークとしては今後、子どもが育つ環境をどのように整えるか、いかに緑を保全し千葉市らしい風景を残すか、食の安全を守るために農業をどのように育てるか、高齢になっても元気で過ごせるようなまちづくりとはどのようなものか、市民提案の事業をいかに多く取り入れるか、などが重要であると考えます。 私たちがかねてより求めてきました予算編成過程が平成20年度から公開されましたが、市民本位の財政運営が図られるためにはまだまだ不十分でした。今後はさらなる公開が進みますが、予算編成過程への市民の参加をさらに求めてまいります。

最後になりますが、千葉市の前市長は収賄容疑で、前議長は恐喝未遂容疑で逮捕され、千葉県庁は組織的に約30億円の不正経理を働いていたということが明らかになりました。不正経理は、千葉市においても業者への預けに関する新聞報道がされたところで、公への信頼が大きく揺らいでいることと思われます。 今後は、千葉市の現状を今まで以上にわかりやすく丁寧に市民に説明し、財政運営に関してこそ、市民の理解と参加を得ながら進むことが、大切であるということを指摘し、市民ネットワークの討論といたします。

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