「千葉市市民参加及び協働に関する条例」修正案・提案理由

今議会に上程されております議案第31号「千葉市市民参加及び協働に関する条例」の制定について修正案を提出いたします。

市民ネットワークと日本共産党千葉市議会議員団を代表して、修正案の提案理由説明を申しあげます。 市当局が、我々が求め続けてきた「市民参加条例」を、今議会において策定するにいたったことに対しては、一定の評価をするものです。ご苦労さまでした。しかし、その策定過程において十分な市民参加が行われてきたか、また提案された「市民参加及び協働に関する条例」がきちんと市民の行政への参加および市と市民の協働を担保できるのか、という視点で検討した結果、残念ながら不十分だと言わざるを得ません。 そこで不足していると思われる点について追加し、暮らしやすい千葉市とするために使える「市民参加及び協働に関する条例」とするための修正案を提出することにいたしました。

市民参加及び協働に関する条例が上程されるにいたった経緯は、2000年3月の「ちば・ビジョン21」の中で「市民参加条例の検討をすすめる」とされ、その後2006年3月「千葉市第2次5ヵ年計画」の中で条例策定への具体的スケジュールが示され、市民参加懇話会が設置されました。11月には、条例策定にむけての基本理念や基本的方向性等について懇話会提言がまとめられました。 この間、折に触れ、市民ネットワーク・共産党は、市民参加条例に関して、議会での発言を続けてきました。

千葉市に最初に「市民参加条例」なるものが記載された「ちば・ビジョン21」の策定のための審議会は、千葉市で市民公募の委員が多数含まれた最初の審議会でした。私自身、その中に公募委員として参加いたしておりましたが、公募委員が集まって自主的な勉強会を開き、その当時はまだ先進的であった箕面市の「市民参加条例」について、学びあい、「ビジョン」の中に盛り込むことを求めました。 また、共産党は2002年第4回定例会において、市民参画条例の発議を行っています。その中で、まちづくりの主役は市民であること、地方分権の進展の中、市民が主人公の立場で、市の政策や市民の意思を決定していくことが必要であり、住民自治は住民の意思で自主的な街づくりを進めることが基本、との理念がうたわれています。

その後、5か年計画の中で市民参加条例の策定スケジュールが示されたのちも、議会質問の中でもたびたび取り上げてきました。 ことに策定に至る過程への市民の参加を常に求めてきたのですが、当局は、公募委員も含む市民参加懇話会において、市民参加条例の制定に向けて、市民参加や協働のあり方について審議してもらい、一連の策定プロセスの中に市民参加を得ながら進めていくので、条例制定作業への直接の市民の参加は求めない、という態度を最後まで崩すことはありませんでした。 そのため、今、条例策定に至っているにもかかわらず、いったいどれだけの市民がその事実を知っているのか甚だ疑問、という状態です。パブリックコメントがとられましたが、結果は11人から55件の意見があったのみ。これから市民が使いこなしていかなければならない、市民参加・協働の条例であるにも関わらず、です。

昨年4月に施行された札幌市の自治基本条例策定では、2004年に「市民自治を考える市民会議」からの提言を受け、「市民自治を進める市民会議」を設置し21回にわたる会議を行って2005年12月に市長に報告書を提出しています。最終報告起草委員会も12回開き、さらに2006年2月に15歳以上の市民、関係団体にアンケートを実施。更に市民向けの学習会、PRのための委員会を設置するなどして作られました。 同じく昨年4月に施行されたお隣の四街道市の市民参加条例も2005年から2006年にかけて「市民参加条例市民委員会」が、こちらも全体会議を20回開催し、条例骨子を作成しています。この市民委員会は、市民の自主運営で、白紙から条例を検討し、市民フォーラムや出前意見交換会を開催し、市民の意見を広く取り入れる工夫がありました。 どちらも十分な時間と市民参加の手法がとられています。この点において千葉市の条例策定過程は納得のいくものではありません。

次に、修正内容について申し上げます。 千葉市原案では「市民参加懇話会」において検討・議論され、提言としてまとめられた「市民参加・協働」の理念が謳われていますが、いささか抽象的である感は否めません。市民参加条例が、市の施策の計画、決定、執行、評価という一連の過程において、自治体に対し、複数の市民参加手続の実施を定め、市民の行政への参加を保障する「行政手続条例」であることを考慮すると、単なる理念条例では市民の参加が形骸化してしまう恐れがあり、市民参加・協働を具体的に保障する手続きや仕組みが明記されることが必要であると考えます。 そこでわれわれは、あくまでも原案の「市民参加及び協働に関する条例」の修正案であることを意識し、原案に不足する部分を追加し、市民が市政に参加することが保障される条例であるよう修正を加えました。

以下修正の主なポイントを説明します。 おもなポイントは、総務委員会での議論を踏まえ、その中で問題とされた点を中心に7点です。

  1. 前文
    千葉市条例の中でも前文のある条例は数少なく、前文は条例制定の背景、理念などを強調する場合におかれるとのことです。基本的に千葉市条例は「である」体を用いるのが原則、とのことですが、「市民参加・協働」という広く市民がその趣旨を理解し、活用していかなくてはならない条例であることを考慮し、条例に親しみを感じてほしいとおもい、まずは、前文は「です・ます」調といたしました。
    原案の示す3本柱「地方分権の進展」「公共の課題の増大」と「市民参加と協働の必要性」は懇話会の中で十分議論され、提言の中にも盛られてきました。そこで条例の前文では、そういった社会状況であることをあくまでも前提としてとらえ、極力平易な言葉を使い、千葉市に住む誰もが大切にされ、同時に、だれもが、まちづくりの主役として地域における課題解決にかかわり、暮らしやすいまちをつくる、そのための、条例制定であると、市民参加を進めるにあたっての、基本的な考え方を述べています。条例前文を読んだ市民が、これなら私もかかわれそう、と思ってほしい、まずは前文で市民の心をとらえたいと思います。
  2. 定義
    「市民」の定義を追加しています。原案には「市民」の定義はなく、もとより広く市民として認めておられるとの説明でしたが、市内に住所を有するものだけでなく、通勤・通学者、市民活動団体なども含めることを明記しました。これは前文にも述べている「こどもも、大人も、障がいのある人も外国籍の人もすべての人が大切にされる」につながります。
  3. 基本理念に「まちづくりの主役は市民」であること明記しました。非常にシンプルな言葉ですが、条例の理念である「地方分権の進展による住民自治の拡充と、公共の課題への多様な市民の主体的な関わり」の必要性は、いいかえると「まちづくりの主役は市民」であることを示していると思われます。
  4. 市民の権利と役割に、情報の公開・提供を求めることができる、市の責務と役割に説明責任を明記するとともに、議会の責務と役割を追加しました。 議会へ言及するかどうかは、この条例が「参加と協働」の条例であることから、なじまない、との意見もあるようですが、他市の参加条例の中でもすでに規定されているものもあります。現在「市民参加条例のモデル条例」として取り上げられることの多い和光市の条例でも、「議会の役割」として「議会は市民との情報の共有を図り、市民や市の機関と協働し、市民参加を進めるよう努めるものとします」とあります。われわれの修正案も、この考え方を踏襲しています。しかし地方分権の時代、「市民参加」の必要性が増す一方で、議会の役割はますます重くなってきています。そこで、今、あらたに策定する「市民参加・協働条例」の中では、議会の役割も一歩踏み込み、行政の監視機能だけでなく、自らの政策形成の機能を充実させることも責務として、あえて盛り込みました。
  5. 市民参加の手法を追加しました。
    原案に対しては、いろんなところで「パブリックコメント条例ではないか」と言われるほど、市民参加の手法がパブリックコメントに集約してしまっています。
    そこで、バランスをとるために、実施機関が行う市民参加手法である「パブリックコメント」に対応させ、市民側から請求できる参加手法として「市民政策提案制度」を盛り込みました。
    この「市民政策提案制度」は、「和光市市民参加条例」で初めて導入された制度です。和光市の場合は、わずか10人以上の署名で市に提案できることになっています。総務委員会の中でも、この和光市の案を取り入れた民主党案と、500人という人数を取り入れたネット・共産党案の中で、人数の根拠なるものの議論がありました。人数だけを見れば、500人以上というのは大変厳しい条件であるように思われます。
    しかし、和光市の場合は、行政が受け入れられるかどうかを検討して回答するのに対し、われわれの修正案では、「市民参加協働推進会議」が関与する形になっています。 また、提案された政策は、提案者が希望すれば、「市民政策提案市民検討会」を開催し、広く市民に検討してもらうことができ、また推進会議に諮問しなければならないこととしました。決して手軽ではない条件をクリアする代わりに、提案の扱いが行政だけで判断されるのではなく、他の市民の意見や第三者機関も関与しながら決定する手続きがとられることとしたわけです。このような提案活動は、より豊かな市民活動を醸成する可能性も秘めていると思います。
  6. 住民投票制度を取り入れました。
    自治体が重要な施策を決定するとき、市民の意向が直接反映される仕組みがあることの大切さが近年ましてきました。住民投票が実施される機会が増えています。市長や議員も選挙によって得ればれた代表ですが、しかし選挙で市民は、その候補者の全部の公約に賛成して1票を投じているとは限りません。まして、選挙後に起こる新たな問題に対しての判断をすべて白紙委任したわけではありません。もし、市民が市長や議会の意思が自分たちの意思とずれていると感じたとき、住民投票制度によって主権者としての意思を、市長や議会に示すことができるわけです。
    住民投票は、「地方自治法」に規定のある、有権者50分の1以上の署名をもって条例制定を請求する「直接請求」の手続きに則った「直接請求型」も可能です。千葉市でも直接請求によって個別外部監査が行われたのは記憶に新しいところです。しかし、この場合の住民投票は、当該案件に関する住民投票を行うための条例案を提出しなくてはならないうえ、その条例案が議会で可決されないと住民投票は実施されません。そこで、自治体が独自に条例で定め、条例で規定した以上の署名数を満たして住民投票を請求すれば、必ず住民投票を行わなくてはならない「常設型」の住民等法制度があります。必ず行うことになるので、請求に必要な署名数は、有権者の「3分の1以上」というように、高いハードルを設けているところもあります。
    われわれの修正案では、常設型ではなく、「行うことができる」とし、実施方法に関しては別条例でさだめることとしています。先に挙げた和光市をはじめ、他市の参加条例の中でもこのような形での住民投票制度の記載があります。
  7. 協働事業の提案
    この条例の中で最も弱いと感じるのがこの「協働」の部分です。協働とは一体どういうことなのか、を、含め、今一度市民を交え再検討し、より有意義な協働事業を行っていってほしいと思います。そこで修正案の中では、あえて「協働事業の提案ができる」という形にとどめました。

2000年の地方分権一括法の施行により機関委任事務が廃止され、自治体は自治体の実情に即した形で法律を解釈し、政策を展開できるようになって来ました。それら施策を展開する上で必要な市政運営の基本理念や基本的なルールなどを定める自治基本条例の制定が各地で進んでいます。われわれも、これまでも千葉市での自治基本条例の制定を求めてきたところです。

しかし、この種の条例は、市民参加をはじめとして、それに盛り込む可能性のある住民自治にかかわる個別の制度がある程度充実してから、市民の側から制定しようという雰囲気の盛り上がりがあり、作られることが望ましい、と言われます。ですから今回私たちは、千葉市において「市民参加及び協働に関する条例」が根付き、市民の参加を促し、住民自治がしっかりとおこなわれる条例となることを、まずは目指し、修正案を提出いたしました。議員の皆様のご賛同を期待いたします。

修正案

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