反対討論

福谷 章子

市民ネットワークの福谷章子でございます。
会派を代表して、本定例会に提案されました、議案第1号平成17年度千葉市一般会計補正予算、議案第7号平成18年度千葉市一般会計予算、議案第37号千葉市身体障害児童福祉手当支給条例等の一部改正について、議案第48号千葉市都市モノレール施設条例の制定について、議案第49号千葉市都市モノレール基金条例の制定について、議案第61号和解等について、議案第89号指定管理者の指定について(千葉市高洲市民プールほか8施設)、議案第90号指定管理者の指定について(千葉公園野球場ほか33施設)、発議1号千葉市社会福祉法人等による介護保険サービスに係る利用者負担の軽減に関する条例の制定について、の9議案について反対の立場から討論を行ないます。
また、議案第7号平成18年度千葉市一般会計予算等の組み替えを求める動議については、基本方針には共感できますが、歳入歳出の組み替え内容には賛同しかねるものがあり、賛成にはいたりません。

2006年度は、分権改革最大の難関である三位一体改革の最終年で、地方が自由に使える予算範囲を広げ、現場に密着した住民サービスを提供するという、地方の自立に向けての財政基盤が確立するはずの年です。
しかし、今後税制改正で低所得者層への税負担は増大し、また介護保険見直しや障害者自立支援法による保険料や利用料の負担増が市民に強いられることになり、改革による格差の拡大と市民生活の圧迫が懸念されます。
同時に、自治体の行政体制の整備確立をめざし、さまざまな改革のうねりの中にありますが、今後の千葉市の自立を支えるのは、市民との真の協働であると考えます。
参加と協働を考える場合、今まで行政が独占してきた公共性を市民に開いていくことはいいとしても、行政ができないことを市民が補完するということでは決してありません。ましてやコスト削減のために市民やNPOの活動を利用することでもないことをしっかりと認識する必要があります。行政がやるべきことを決めるのも市民であるべきです。ようやく動き出す市民参加条例は、これを可能とする条例であってほしいと思います。また将来的には自治基本条例の制定を目指してほしいと考えます。

さて、2006年度の一般会計予算は3323億円で、前年度比2.7%減となっています。税制改正や堅調な景気回復の影響により、市税収入は1670億円と、前年比3.1%増となってはいるものの、212億円の収支不足は、基金の活用81億円、土地の売り払い25億円、行政改革推進債や退職手当債など新たな市債の活用、公共料金の新設改定による歳入の確保、事務事業の厳選見直しなどによる歳出の抑制で対応するという、厳しい予算作りとなっています。活用できる基金もいよいよ底をつき、国に促されてようやく財政健全化プランが策定されたものの、次年度も一般会計市債発行額は521億円、債務負担行為70億5300万円となり、全会計合計の利子を含めた1兆3620億円に上る借金を減らすものにはなっていません。行政改革推進債や退職手当債については、赤字地方債と認識し、地方分権を基調とした財政計画にしていく必要があります。
財政健全化プランの中で示された目指すべき財政構造の姿はあまりにも「無難」であり、今までの施策の集約の域を抜け出ているとは思えません。一人当たり147万円にもなる借金を、少しずつでも減らす方向に持っていく、という決意が見られないのが残念です。
今回改定された新行政改革推進計画では財政健全化プランのほか、定員適正化計画も5年間で総定員の4.6% 360人を純減するという目標値が設定されました。今後(指定管理者制度の活用や)民間への委託が拡大されることは避けられませんが、コスト削減や人員の削減のためではなく、市民サービスの質の向上と官民の責任の明確化がしっかりと見極められることが大切です。

このような中で、県との和解を成立させてモノレール資産を譲り受けることは、今後の千葉市の固定的な経費負担を生み出します。県から支出される64億円のほとんど全額を政策投資銀行に一括返済するという決定に至るプロセスは不透明といわざるを得ません。さらに、延伸ありきの議論は公共交通のビジョン作りの幅を狭めるおそれがあることから、議案第1号、議案第48号、議案第49号、議案第61号は認められません。

議案第37号は、障害者や自宅で寝たきり高齢者を介護している方への福祉手当を見直すものです。これまで他政令市より手厚い手当てだったというのがその理由ですが、次期尚早です。障害者自立支援法の施行により、サービス利用料や医療費を応益負担で1割支払うことになり、障害者の生活への影響が心配される中での福祉手当見直しの意味が理解できません。千葉市として独自の減免策を取らないのなら、もう少し様子をみるべきではなかったのでしょうか。
経費の縮減とサービス向上を目指した指定管理者制度の導入にあたっては、一つ一つの施設の効用を充分に吟味し、指定された管理者だからこそ提供できるサービス内容が、議案上程に際して丁寧に説明されなかったことは遺憾です。特に33施設一括の管理を同一管理者に指定する議案第89号、議案第90号は、一つ一つの施設の創意工夫による市民サービスの向上を見込むことが困難なことから、賛同することはできませんでした。

次に議案第7号について順次申し上げます。
まず、障害者自立支援についてですが、障害のある方が自立した生活を営むための福祉サービスを益とすれば、障害の重い人ほど負担が重くなってしまいます。負担がきついからとサービスや医療を制限することのないよう、自治体としてもサービス量と費用負担については、本人の納得のいく形で対応するよう強く要望します。10月からの地域生活支援事業については、自治体がサービスや利用料を設定することになりますので、無理な負担のかからぬよう配慮をし、自治体独自の支援策を求めます。

介護保険については後期高齢者の増加による介護保険会計の逼迫に備え、虚弱高齢者に対しては介護予防事業が、要支援1,2の方に対しては、新予防給付が始まります。それに伴い、介護保険料も基準額が3100円から3780円に値上がりします。所得階層を5段階から7階層に細分化し、所得に応じた負担を考慮したものの、税制改正の影響を受け、市民税が非課税から課税になった方に対しては激変緩和措置が取られることになりました。所得の低い方が施設等を利用している場合は補足給付などの負担軽減措置もとられます。しかし今後、介護保険見直しによる高齢者の暮らしへの影響を十分調査する必要があるでしょう。したがって、発議第1号については、現時点では賛同しかねるものです。

現在示されている千葉市地域防犯計画については、市が示した計画案の最初に、かつての日本は地域の連帯感が強く、安全であったものが近年犯罪が急増したとして、犯罪認知件数が過去10年間で1.5倍にふえたことが強調されています。しかし警察庁の犯罪統計や、犯罪白書などに基づく少年犯罪データベースによりますと、戦後の少年による殺人事件で、件数がもっとも多いのは、1951年および1961年です。双方とも448件、少年人口10万人あたり、それぞれ、2.55人、2.19人です。これに対し最近の2004年は、62件、0.48人で、1951年の5分の1以下、1961年の4分の1以下に過ぎません。
また本年2月25日の朝日新聞に掲載された「子どもの安全と社会」では、次のように述べています。「警視庁の「犯罪統計書」でも、殺害された小学生の数は、90年代以前と比べて、人口比でもかなり減少しており、実数でみても76年の100人、82年の79人に対し、2004年は26人である。なのになぜ、こんなに犯罪への不安が高まっているのか。今、問題となっているのは、客観的な治安悪化でなく、あくまで「体感」治安というイメージの悪化である。問われているのは、犯罪対策ではなく犯罪「不安」対策なのである。」
市は冷静に数字を分析し、不安を煽る事のないようにすべきです。また計画づくりでは治安管理の強化に安易に流れず、コミュニティ復活の名の下に、同調性を強いたり、障害を持つ人や外国人などが排除されないような地域社会にむけた計画にする必要があります。また市内防犯パトロールや防犯ネットワーク、地域防犯活動への支援においても同様な視点での対応が大切であると考えます。

国民保護計画については、国民保護協議会を設置し、国民保護計画を策定することとしていますが、「有事・国民保護法制」関連法においては、「基本的人権の尊重」が明記されています。市は法にも書かれているから人権侵害はないものと考えるとの説明をされてきましたが、憲法の大きな柱である基本的人権の尊重がわざわざ明記してあるということは、この「有事・国民保護法制」には基本的人権の尊重に抵触する事態が想定されていると考えざるを得ません。
そして市民の命や財産にかかわる重大な計画でありながら、市民の多くが知るところとなっていないことも問題です。市は人権擁護の意味で弁護士やさまざまな立場の市民の充分な意見の反映を保障するべきで、国が示した計画にのって、次年度内に作り上げようとするような拙速なる計画づくりには反対です。
また協議会メンバーは、ほとんど「防災協議会」構成メンバーと重なっています。しかし、地震、台風等の自然災害と「有事」とは根本的にその性格はことなります。先日行われた県と富浦町の児童を含めた訓練は戦後の教育現場の中でも突出したもので重大な問題があります。有事と災害時の違いについて市はしっかりと認識した対応をしていただきたいと考えます。

千葉市消費者条例の改正については、消費者の権利尊重と自立支援を基本とした消費者基本法への対応として消費者保護条例の全部改正が提出されました。消費者問題が深刻化・多様化する中で、求められてきたものであり、特に被害者となりやすい、高齢者や若者への周知や対応が重要です。また同様な犯罪などが知られない内に拡がることもあり、他の自治体などとの連携もはかり、悪質な業者などの情報は公表など迅速な対応が求められます。
今後市民からの相談も増加することが予想され、また多様な問題に対処するためにも体制を強化する必要があります。市の責務などが明記されていますが、立ち入り調査、指導、勧告公表なども含め、しっかりと行っていって戴きたいと考えます。

地域防災対策についてですが、市は避難場所の耐震性については災害があった後大丈夫かどうか、診断してから市民に避難してもらうとのことでした。避難場所として 指定された施設であれば、市民は当然耐震化が図られているものと考え,避難してくるでしょう。
現在学校や公民館、コミュニティ施設が避難場所と指定されていますが、老朽化した学校の体育館は建て替え時まで放置されるなど、耐震対策の遅れは問題です。早急なる対処が必要でこの様なところにこそ充分なる財源を当てるべきと考えます。

「若者の就職支援」では「ニートやフリーター対策として保護者向けの啓発講座」が開催されます。悩みを持つ保護者にとってはじっくりと相談できる場の設定も必要です。利用者のニーズに対応できる有意義な内容になることを求めます。「ユースリーダーの養成」については、第2次5ヵ年計画の中で高校生や大学生を対象に青少年活動リーダーを養成する研修を予定しているとのことです。地域社会の担い手である若者にとって、地域の様々な活動に参加する機会や能力を発揮する場が必要です。しかしながら参加する機会や場が少ないこともさることながら、若者自身が参加意欲に欠けるということも事実です。今後、若者自身の潜在能力が引き出され、地域社会づくりに参画できるような若者が育つことを期待します。若者の支援は「就職支援」のみならず、包括的な支援が必要です。そのために、市民局・保健福祉局・教育委員会・経済局など横断的かつ全庁をあげて千葉市の次代を担う若者支援の取り組みを進め
られるよう、要望いたします。

JFEスチールの違法排水問題では、本年1月にダスト精錬炉が試験的に再稼動いたしました。直後、環境基準を超えるシアンが確認されたとのことです。シアン対策専門委員会に引き続き、来年度は新しく「環境問題対策専門委員会」を設置すると伺い、新たな取り組みを評価いたします。蘇我臨海部地区では、町の近くに工場がある、いえ工場の近くに町を作るという、市のそもそもの姿勢に会派としては疑問を感じてきたところです。今後市民が安心して暮らしていけるよう引き続き事業者への立ち入り検査を強化・指導していくことを強く求めます。

下水道行政について申し上げます。都市化により雨水は浸透から、排除すべきものとして、安全に、速く、多量に排出するための河道整備が主流として進められてきました。しかし、近頃では地下水の枯渇による下流域の地盤沈下や、ヒートアイランド化を防ぐ雨水浸透が進められています。雨水浸透施設による流出抑制の効果は確認されていますので、従来の河道整備に替えて、上流・中流域での宅地内貯留・浸透も含め、雨水浸透策を積極的に進めていただきたいと思います。さらに、次期5ヵ年計画では、浸水被害の原因究明や対策を効率的に進めるために、降雨と流量の観測を実施することや、河川については洪水ハザードマップを作成するとしています。こうした取り組みを地域住民と一緒に作り上げていくことが必要で、浸水被害の実態把握や、降雨と流量の観測を市民参加で行う取り組みを進めるためのシステム構築をすすめ、市民自ら考え浸水被害を防ぐ等、治水に関わるための取り組みを進めていただきたいと思います。

下水道局における、中央・南部浄化センターの維持管理業務において、経営の効率化・健全化を目指して平成18年度および19年度に包括的民間委託を検討するとのことです。平成10年度からの同施設の維持管理業務委託の執行実績をみますと、指名競争入札の落札率はすべて99%以上となっており、神業ともいえる結果です。今後の包括的民間委託の検討にあたっては、単に費用の削減だけでなく、入札のあり方そのものから見直すことも必要です。

都市行政については、都市計画法が大きく見直され、今まで拡大を続けていた市街地整備も縮小し、既存市街地の充実といった方向性が出されています。都市計画道路の見直し、密集住宅市街地の住宅・住環境の整備は今後重要な施策となると思います。手付かずのままに縮小された戦災復興計画を防災という新たな位置づけで都市政策とすることや、市民とともに都市計画道路の見直しを行うことなどを通し、業務核都市構想などに基づき新総合ビジョンに掲げられた現在の千葉市の都市計画を全体として見直されるよう、期待いたします。

北総中央用水土地改良事業は、未確定の受益者に代わり市が費用負担をし、畑地整備を進めることを前提に、水を確保する事業です。そのための大きな負担は、受益者ばかりでなく市民の納得の下に進めることが必要です。補助金として支出している国営事業の負担金は幹線用水路について、既に当初受益面積割で負担する基本方針が出されているようですが、覚書の見直しにあたって公平性が保たれるよう臨むことが必要です。

水道行政について、中期経営計画は、5カ年計画に基づき策定されたとの事です。第三次拡張事業計画が下方修正されたと考えられますが、2015年の最終目標計画値は見直されないままとなっています。早期に見直すとともに、新たな浄水場計画、配水管網の整備なども実効性のある計画なのか検証し、見直しをすべきではないでしょうか。また、県内水道のあり方について市として傍観するのではなく、積極的に市民にとって有効な水道事業を展開するべく見解を明らかにする必要があります。

学校教育においては、スクールカウンセラー、図書館指導員、フレンドリーチューター、英語指導の外国人、特別教育指導員など、子どもに関わる人材をきめ細やかに配置していますが、本来は正規の教員による少人数学級の実現を目指すことを望みます。また、既存校へのエレベーター設置や、学校生活サポートなど障害児受け入れのための環境が整いつつあることから、今後はさらに受け入れのための全教職員の意識啓発を一層図られることを望みます。

児童生徒の安全対策では、2005年6月から学校セイフティーウォッチャーが、郵便局の方々も走るセイフティーウォッチャーとして、2005年4月から業務中に見守りを行なっているとのことです。子ども110番の家も、コンビニエンス店舗にもステッカーが貼られ、新たに医師会・歯科医師会・薬剤師会の方々へも協力を依頼しているとのことです。セイフティーウォッチャーにしても、子ども110番の家にしても、数の拡大を目指していますが、最終的に求められるものは、数の拡大よりも、人と人とのつながりを作っていくことであると考えます。見守る大人たちが、熱心さのあまり、監視的・強制的になることなく、緩やかな関係性を築きながら、子ども達を温かく見守ってほしいものです。

なお、養護を必要とする子どもたちは依然として増加しています。千葉市の養護施設ほうゆう学園については、子どもと職員との安定的な関係が保たれるよう、指導監督の継続を要望します。

以上、主な施策に関しての問題点と今後の課題を申し上げ、市民ネットワークの反対討論といたします。

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