谷津田の保全について

小西由希子

 2003年5月に報告された「谷津田の自然の保全活用に関する調査報告書」では、GISを用いたり、然環境の資質について、複数の観点から定量的な調査をおこなっており、今後の谷津田保全を進める上で大変貴重なデータベースが構築できたと思われます。
 特にGISの調査では、これまで一般にゴルフ場などは一括して緑地としてカウントされることが多くありましたが、本調査では人の手が加わった場所として評価されており、慎重できめ細やかな視点で調査・考察されたことがうかがえます。
 また、市内の谷津田を現状に合わせてタイプ分けしたことは、谷津田の状態を把握、保全を考える上で大変効果的であると思われます。
 また、基本方針をとりまとめ決定するにあたり、市民の意見・提案を募集したことは、多くの市民に谷津田の保全への関心を深め、今後の施策展開に効果があるものと思われます。
 保全・活動方針についても、縦割り行政の問題の対策、地権者や市民団体の支援、構造改革特区の設定、都市市民との交流、産廃問題の適正化など、様々な方策が網羅されており、高く評価できるものと思われます。
 ただ一つ大変残念なことに、このたびの調査検討委員会は公開されておりませんでした。公開にするべきであると考えます。

(1)調査報告書の意見募集についておうかがいいたします。

  1. 報告書は、環境保全部・市政情報室・各区役所にて閲覧することができましたが、ボリュームも多く、閲覧だけで意見を出すのは無理があるのではないでしょうか。配布された概要版では調査内容について十分知ることはできず、意見・提案の提出は難しいものと思われます。インターネットでの資料閲覧も可能ですが、インターネットに接続できない市民も多いでしょう。資料は文字が大変細かいページもあり画面上では読みづらいものでした。市民に広く意見募集をする条件設定として十分であったとお考えでしょうか。

  2. 意見募集期間については、報告書が出されてから2週間という短い期間では不十分ではなかったでしょうか。お考えをお聞かせください。

  3. 調査報告書は大変内容も濃く、意見募集期間も短いことから、事前の資料説明会が必要ではなかったでしょうか。

  4. 意見を提出された市民の数をお聞かせください。

(2)「谷津田の自然」の定義についておたずねいたします。

  1. 平成11年6月、千葉市環境局環境保全部よりだされた「千葉市野生動植物の保全施策指針」において、「谷地形が基盤となる、谷底部の谷津田あるいは湿地植生とその周辺の斜面林や畑、集落が一体となったまとまり」を「谷津田の自然」と定義しています。千葉市で今保全しようとしている「谷津田の自然」には、歴史・文化・人との関わりなど自然以外の様々な要素が含まれており、「谷津田の自然」という表現は適切ではないと考えますが、いかがでしょうか?

(3)特性調査について

  1. 野生動物調査
    市内では、都川周辺では斜面林でニホンリスが、またある谷津田では過去に糞によってキツネが確認されており、貴重な動物でもあるので、場所の明確な記載はなくとも、確認の事実は記載する必要があるのではないでしょうか。また、鳥類については、平山町ではサシバやフクロウなど谷津田に生息するカエルやネズミなどを捕食する猛禽類や、台地上の森林や斜面林の昆虫を捕食するアオバズクなど、谷津田で特徴的に見られる鳥類についての記載がありません。さらに、魚類についての記載が全くないのも不十分であると思われます。ホトケドジョウやスナヤツメ・シマドジョウなどは、谷津田に特有、または多く見られる魚類で、貴重種に指定されているものもあります。谷津田は水とのかかわりの深い環境ですので、ぜひ項目として取り上げる必要があると思われますがいかがでしょうか。

  2. 土地所有者の意識調査では、調査エリアが限られており、回答者の人数も少なく、千葉市における土地所有者の意識調査として評価するには少々無理があるように思います。今後さらにエリアを拡大して調査する必要があるのではないでしょうか?

  3. 都市住民の意向
    都市農業の多面的機能に関する住民の意向調査として、近畿都市農業懇談会のアンケートが掲載されていますが、「周辺農業に果たしてもらいたい役割」との問いの中で「農業体験等、自然とふれあえる場」とこたえた意見が51.9%であったそうです。一方、ちばまちづくりファミリーアンケートでは、「谷津田保全活動について」の問いに、「参加したいとは思わない」という意見が38%もありました。この数字から見ますと、この近畿地方でのアンケートをそのまま千葉市都市住民の意見ととらえるのはいかがなものかと考えます。改めて千葉市民を対象にこのような調査が必要と思われますがいかがでしょうか。さらに、「農業・農村の公益的機能維持のための負担」についての問いにも、「都市住民でも負担するべき」との回答が出ており、調査報告書では評価されています。しかし、実際に農業を守るために都市住民が経済的負担を強いられた場合、それを支払う覚悟があるかどうかというのは別問題でしょう。この点につきましても、千葉市民を対象に改めて慎重な意識調査をする必要があるものと思われますがいかがでしょうか。また、「谷津田の場所を知らない」とこたえた市民が51.8%でした。谷津田という言葉は、まだまだ多くの人に知られていないのが現状のようです。「谷津田」という名称そのものについてどれだけの市民が知っているのか、調べていたら教えてください。まずは「谷津田」そのものの周知について取り組む必要があると考えますがいかがでしょうか。

(4)保全・活用方針について

  1. 谷津田の保全につきましては、市民の協力が不可欠かと思いますが、現在の市民による保全取り組み状況についてお伺いいたします。市内での市民の取り組み状況について把握しておられる谷津田と、保全団体、その活動内容について教えてください。

  2. 保全・活用施策の実施体制のイメージにおいて、読んでみて少々驚いたのですが、行政主導で進めるよう記載されています。将来的に担っていくのが市民であるならば、計画の初期段階からの市民参加が必要ではないかと考えますがいかがでしょうか。

  3. 現在「谷津田を知りたい」、「谷津田の保全活動をやってみたい」と希望する市民をどのように受けいれているのか現状をお聞かせください。また今後の計画につきましても合わせてお教えください。
  4. 谷津田の保全につきましては、農業との関わりは大変深く大切です。今後の保全計画について、農業とどのように関わり合いながら計画を進めていかれるのか現段階で検討されている範囲で結構ですから具体的に教えてください。

2回目質問
  1. 特性調査の項目立ての中で、鳥類については、谷津田では見られないコアジサシが記載されているにもかかわらず、サシバやフクロウなど谷津田に生息する両生類・哺乳類などを捕食する鳥類についての記載がないのは不十 分であると思われます。また、魚類の記載がないのはあまりに不十分と考えますが、この点につきましては、どのようにお考えでしょうか。

  2. 土地所有者の意識把握は、農業センサス等の調査を活用するとのお話ですが、農業センサス等の等とは何をさすのでしょうか。また、平成13年3月に千葉県企画部統計課より発行された農業センサスを私も調べてみました
    が、これは農林業の基本構造の現状とその動向についての調査であり、意識調査ではありません。これをどのように活用されて、谷津田土地所有者の意識調査とされるのでしょうか。ご見解をお伺いいたします。

  3. 市民意識調査については、具体的な施策を展開する段階で調査をするとのお返事でしたが、計画の段階から市民の参加が必要ではないでしょうか。なぜなら保全については農業従事者だけでなく都市住民の関わりも不可欠で
    あると考えるからです。また、今回の意見募集には、14名もの方が意見を提出されたとお聞きしました。77ページにものぼる資料を読んで、2週間という短期間で意見を出した市民が14名もいたということは、谷津田保全に関して市民の関心は相当に高いものであることが示されており、計画段階からの市民参加が必要であると考えます。お考えをお聞かせください。

  4. 保全についての市民の取組状況につきまして、1回目の質問でいたしましたように、個々の谷津田と保全団体、その活動内容についてお答えください。

  5. 市民の受け入れは、自然保護ボランティア育成、谷津田いきものの里整備事業などの中でとのご答弁でしたが、これらは広く市民に公募しているのでしょうか。また、人材育成とはどのような事業を指すのでしょうか。行政としての市民の受け入れの現状は残念ながらまだ不十分であると考えます。
     ところで、私は、地主や土地の方のご理解を得て、「NPO法人 ちば環境情報センター」や「ちば・谷津田フォ ーラム」などの市民グループで谷津田のごみ拾い・観察会・米作りなどを行っております。ここでは月2回以上の 活動を行なっており、毎回地域の方や親子連れが参加され、多いときは50名を越える参加者があります。また学 校の総合学習のお手伝いなども行なっています。このように谷津田に関心をもって「何かしたい」と思う市民を市民団体が受け入れ、活動を通して谷津田の保全とともに人材育成などを行なっているのが現状です。行政だけで動くのではなく、市民団体と協力してともに学習・活動の場を提供することで、よりいっそう谷津田保全への関心が深まり、事業の推進も図られるのではないかと思いますがいかがでしょうか。
  6. 農林業との関わりにつきましては、関連の計画や施策との調整・連携というお答えでしたが、具体的にどのようなものをさすのでしょうか。

  7. 最後に、市民意見の募集についておうかがいいたします。
    今回の意見募集につきましては、意見募集の閲覧方法・期間・市民に対する周知などは、これまで市でおこなったものと同様な方法で実施したとのお答えでした。しかし、今回の意見募集期間は2週間で、同じ環境局でおこなった「ごみ減量ちばルールづくり」は1ヶ月、下水道局が行なっている「千葉市水辺再生基本プラン」のアンケート実施期間は、約1ヶ月半です。市民と行政との協働を目指す市政実現のためには、意見募集の方法を庁内的に統 一していく必要があると考えますがいかがでしょうか。

3回目
 谷津田の保全につきましては、これが正解という一つの答えがあるのではなく、農業の維持・市民参加による保全・公園化などさまざまな方法で進めていくのが望ましい姿であると考えます。
行政だけ、市民だけ、農家だけで取り組むだけでは解決のめどはつきません。
 農業の継続は、谷津田保全の第一の方法でしょうが、経済的課題、後継者問題などのさまざまな問題があります。谷津田での農業を維持継続するための具体的な施策を早急に考えていかなくてはいけないと思われます。
 5月10日の朝日新聞によりますと、経済協力開発機構(OECD)が農業の「多面的機能」重視するリポートをまとめたということです。そこでは、農業の持つ多面的機能に含まれる環境保全などを実現するには、農業政策と一体的に進めたほうがコストが低いと指摘しております。1)多面的機能は、市場経済を通じてはうまく供給できず、公共財としての性格がある。2)農産物生産と一緒に進めた方が安上がり、などとして、農業の多面的機能を積極的に評価しているそうです。さらにそのためには、農家への直接支払いのように的を絞った対策が適していると指摘しております。農水省でも農家への直接支払いを検討していると書かれてありました。
 多面的機能に対して国際的に共通認識ができるのは有意義だとして、国内対策で活用していく考えであるということです。ぜひ、市レベルでも、谷津田のもつ多面的機能を評価し、農家を支援していく方法を今後考えていっていただきたいと思います。
 また、今後保全を考えるうえで市民の理解・参加は不可欠であると考えます。ぜひ積極的に市民を巻き込む施策の展開を望みます。
 計画書を作ってモデル地区で実施して終わり、ではなく、市内の谷津田を一つでも多く望ましい形で保全していくために、ぜひ農業や教育など関係部署との血の通った連携を進めていただくよう強く要望いたします。
 調査検討会の公開について要望いたします。このように付属機関等に属さない検討会や懇話会などの公開につきましてもぜひ公開を進めていただきたく要望いたします。これらの会議は、基本的には公開であるとお聞きしていますが、非公開でない場合でも市のホームページなどで必ずしもお知らせがあるわけではありません。
 担当部署以外検討会の開催について知らない場合もあり、各会議が開催される際、委員に対して公開についての審議・確認を必ずされているわけでもないようです。市民参加のまちづくりをすすめる上で、会議の公開は必須です。すべての所管におきまして、今後ぜひ公開していただく方向でよろしくお願いいたします。
 また、意見募集につきましては、環境局からは、「これまで市が行ったものと同様な方法で実施した」とのお答えでしたが、市民意見募集につきましては、横浜市では、「パブリックコメント実施要綱」を策定、また、京都市では、5月議会で「市民参加推進条例」が成立し、市の責務として意見募集を掲げています。千葉市におきましても、ぜひ市民意見募集につきまして十分な議論を行っていただきたいと思います。
prev  next