*代理人視察報告*

『天ぷら油リサイクルバス(そらべあ号)で行くカーボンオフセット・エコツアー』参加

日 程
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視察先
目的

7月17日〜18日

天ぷら油リサイクルバス(そらべあ号)で行く カーボンオフセット・エコツアー

BDFで走るバス

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廃食油から作った油で走るバス(そらべあ号)に乗って移動。
すでに京都市などでは市バスに導入されているが、軽油に混ぜるのではなくBDFをそのまま給油して走行するには(機器が目詰まりするなど車に不具合が生じるのではないかなどの理由で)まだ躊躇する事業者も多い。そんな中、富士急行が引き受けてくれたということで、3年前からイベント時に走行している。100%BDFでも特に不具合はないそうだ。
出発は新宿駅。前夜BDFの老舗「染谷商店」で給油したバスは一路宮城県塩竃市へ。

塩竃市のBDF生産

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かまぼこの生産が盛んな塩竃市。揚げかまぼこ工場などからでる廃食油を集めてBDFを生産。
主体:塩竃市団地水産加工業協同組合。
プラント設置総事業費1億3000万円。(建設費の2/3は環境省から)平成18年から稼働。生産量は36000リットル/月で東日本最大規模。原料の9割がBDFになるとのこと。利用者は、組合員80人、市公用車、ごみ収集車、生協のトラック、個人・法人(200人)で会員登録した人。
1リットル105円で販売しているが、メタノールや触媒など原料の値あがりで来月から値上げの予定。朝8時から午後5時までの限られた営業時間と、ほかに給油場所がないことが利用者にとっては不便とのことだが、需要に供給が追いつかない状況だそうだ。

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工場の方によると、製造過程の原理は単純だが、油の質や温度などによって工夫が必要で、試行錯誤を重ねてきたとのこと。職員は5〜6人。油の回収も行っている。パーム油や動物性の油は常温で固まるため不適。また、副産物のグリセリンの処理が問題だったが、農業試験場での研究の結果、堆肥の微生物分解を活性化することがわかり、活用しているそうだ。事業が上手く回っている理由は、水産加工所の用水生産・廃水処理のためすでに組織・資金があったこと、またかまぼこ工場からの廃油で品質が均一なことのようだ。
そらべあ号、ここで給油し、岩手県葛巻町へ出発。廃食油は、これまではインクの溶剤やペットの資料に利用されていたそうだ。機械の燃料にも使えることがBDFの利点だそうだ。

ツリーハウス

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塩竃市生涯学習センター敷地内に作られたツリーハウスを見学。同市出身の写真家平間至氏より寄贈(制作費は100万円)。製作は、ツリーハウスクリエーター小林孝氏と8人の職人さんで、10日間。地元鳴子(なるご)の杉を利用。樹齢80年のヒマラヤスギの大木にロープやはしごで設置。製作時にはかなり枝を払ったそうだが、1年ですっかり回復し、ツリーハウスをこんもりと枝葉が覆っている。人の気が木を育てるのだろうと館長さん。てっぺんまで登ると海が見えるのだそうで、子どもたちにはすばらしい贈り物。欲張りをいうと、ツリーハウスにもリフトなどバリアフリーの視点があったらなと感じた。怪我をしたらどうするの?と、ツリーハウスは造ることより運営することが大変なのだという。

葛岡町 クリーンエネルギーの取り組み

明治時代から酪農が盛んで、人より牛が多い町。人口7900人、牛11000頭、年間120トンの牛乳を生産。食糧自給率は200%。風力発電・太陽光発電・畜産糞尿や木質バイオマスによる発電により、エネルギー自給率は80%。森づくりの取り組みも意欲的。

  1. 森林組合は岩手県一元気とのこと。町のほとんどが山林で、9割以上が個人所有の森だそうだが、手入れ・植林された様子が車窓からもよくわかった。
  2. 個人所有の森を民間企業が購入。町が縁組みしている。
  3. ふるさとづくり基金(H.18〜)
    間伐材搬出、伐採跡地の再造林、ふれあいの森(仮称)整備、学校等公共施設にペレットストーブを設置するため、町内をはじめ全国に向けて寄付金を募集(全国から寄付が集まっている)。木くずペレットの製造はなんと昭和50年代から行われてきたという。財政的には苦しく、高齢化が進んでいるそうだが、クリーンエネルギーの取り組みや自然体験によって観光客は年間50万人。説明してくださった職員さんからは、町の資源を十分知り尽くし、欲張らずできることを淡々と、しかし自信を持って取り組んでいる様子が感じられた。

知的障がい者通所授産施設「こだま園」の取り組み(八戸市)

成人48名が通所。職員20名。就労移行支援、就労継続支援(B型)としてBDF生産に取り組んでいる。 病院やレストランから回収した廃油(金額はわずかだが有償で引き取っている。月1000リットル取り扱い)を施設内で精製し、施設の送迎バスやトラックに使用したり、一般に販売(トラクターなど農機具の需要が多い)。また、市からの委託事業として市内10カ所のスーパーに集められた市民からの廃食油を回収し、市が精製する施設(市清掃車に利用)に持ち込む作業を請け負っている(2000リットル/月)。
グリセリンは製紙会社や金属会社に燃料として引き取ってもらっている。400万円の助成金により施設を改善。それまでは手づくりの施設で試行錯誤でやってきた。1リットル95円。ほかにパン・ケーキ製造などの作業もあり、利用者さんの収入は、月数千円から2〜3万円。

感想

  • BDFの千葉市での取り組みの可能性
    BDF精製には、あるまとまった量の廃食油が必要であること(家庭からの廃食油回収はなかなか集まらず大変なこと)。また、常温で固まってはならないので動物性油脂やパーム油は不適。その他の植物油ならどれも大丈夫だが、油質によって精製に工夫が必要であることから、比較的均質な廃食油が手にはいることが大切であることがわかった。
    上手く稼働するようになるまでには工夫が必要で、導入には努力を惜しまない姿勢が大切のようだ。油質やプラントによっては(取り扱う量にもよるが)数百万円程度から高価なものまである。

  • 荒廃した森林の整備と地元産木材の活用
    森林整備や森林資源の利活用のために設置されたふるさとづくり基金は、金額は少ないが活用対象が明確で、寄付した人が「何に、どのように使われ、どんな効果があったか」を実感できるものとなっている。千葉県でも議論になっている森林環境税については、使途を明確にし誰にでもわかりやすく納得のいく使い道を示すことが必要であると再確認した。
    また、すでに今年から千葉県でも進められようとしているが、手入れのできない里山を企業に貸し、社員の福利厚生・企業の社会貢献として活用することを行政が後押しすることが求められている。千葉市は交通アクセスの面からも恵まれており、里山・街山を含めて検討してはどうかと考える。

報告:小西由希子

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