*代理人視察報告*

伊賀市視察報告

日 程
参加者
視察先
目的

7月9日(水)

議会報告会傍聴

議会報告会に関しての基本的な考え方(要約)

地方分権一括法の施行で地方の自己決定権が拡大した中、議会が執行機関の監視をすることがより重要になっている。特に議会が市の意思を決定する上で、住民の意思との乖離がおきないよう不断の努力が必要である。また議員は選出地域の代表ではなく、市全体の代表であるとの自覚と市民意識の変革、さらに市民への情報提供、説明責任を推進しなければならない。

よって議会報告会を 条例で明文化し義務付ける。また運営は議会が行い、議会報告を行う際は、議員は個々の意見、見解は述べない。(ただし意見を求められた場合はこのかぎりではない) また具体的なやり方に関しては、議会報告会実施要綱に基づいて実施されています。

傍聴記

写真:議会報告会の様子

さて私たちが実際に見学をさせてもらった議会報告会では、議会からは5人の議員そして事務局から1人の職員が来ており、3月議会と6月議会の報告を行いました。場所は地区センターのようなところで、参加者は20人弱でした。
伊賀市の市議会議員は現在34名。全員で通常5から6人の6班を編成し、議会後概ね1ヶ月以内に実施するとのことです。伊賀市は旧小学校区38地区が住民自治協議会という地域自治の単位として位置づけられており、この38地区ごとに報告会を実施しています。数が多いので1協議会年1回で、報告会終了後、代表者が議長に文書で報告し、市議会ホームページに掲載。市行政への提言・要望は議長が市長に文書等で報告することになっています。

議員からの報告の後に住民からの質問や意見では、三重県RDF発電所(ごみ固形燃料発電所)へのごみ処分委託からの勇気ある撤退についての考え方、合併債を使っての駅前開発ビルの必要性、住民への情報の公開が不十分、不祥事と今後の市長選についてなど多岐にわたっていました。そのやり取りは、まさに議員及び市民が自由に情報及び意見を交換する場といった感じでした。  

感想

最後に千葉からの視察ということで紹介もされ、感想を述べてくださいと請われました。私は千葉も伊賀市に負けないよう、市民とともに議会改革を進めていきたいと挨拶をしました。
議会報告会は住民との意見交換の場として、非常に有益な方法です。このほか議会が出前講座も行うなど積極的に地域に議会が出ていく動きを作っています。これらの実践を参考にし、千葉市での実現に結び付けていきたいと思いました。

報告:長谷川弘美

7月10日

議会事務局長よりの説明

伊賀市議会基本条例の制定過程

まずは「自治基本条例」
伊賀市は、平成16年11月、1市3町2村の合併によって生まれました。合併に至る協議の中で、自治基本条例の制定が検討され、16年12月議会で可決、施行されました。その特徴は「住民自治協議会」の存在です。「市民が地域を取り巻く様々な課題に取り組み、市民が主役となったまちづくりを行う」ことを市は尊重し、支援することが条例の中で定められています。住民自治協議会は、市長の諮問に応じ地域の問題の調査審議をし答申すること、その答申を市長は尊重することとなっており、また、審議のための情報収集も保障されています。

議会の動き
伊賀市の議会は、この自治基本条例の制定で、行政と市民は太いパイプでつながることとなり、議会不要論につながるのでは、と危惧を持ったようです。

  1. 平成18年4月の議長選挙 
    議長に立候補された安本美恵子さんは、立候補演説の中で「議会基本条例の制定・政務調査費改革・議員定数の削減」を公約として掲げ、選出されました。直後に、議長の諮問機関として「議会あり方検討委員会」が設置され、その際議長は「議会が独善的にするのではなく、市民の意見を聞いて検討するよう」要請されたとのこと。
  2. 5月〜8月 56回83団体との意見交換会
    合併直後とのこともあり、行政に対する不満がかなり噴出。議会に対しても「議員個々の顔は、少なくとも選挙の時には見えるが、議員の集まる議会はいったい何をしているのかちっとも見えない。議会質問はわかりにくい、なれ合いに見える。議員の数が多い」といった声が多かったようです。
  3. 9月〜10月 条例素案づくり
    かなり急ピッチで進めていますが、素案作成の際の参考としたのが、平成15年北海道自治体学会で発表された札幌市職員の論文。この間、7回のあり方検討委員会を開催し、法務的なチェックなども行っています。
  4. 11月27日議長へ答申  
    11月中に市内6か所でタウンミーティングを開催し、「議員の首を絞めるものになるが、可能か」といった意見もあった、とのことですが、それを受けての手直し作業を経て議長へ提出されました。
  5. 12月1日〜14日 パブリックコメントの実施。
    意見数は85件。同時期に議員懇談会も開催され、議員内での議論がされていないとの指摘がされました。そこで予定していた12月議会での上程はやめ、議員懇談会をすべて公開で開催し、議員への条例の逐条説明を行い、その中の議論で「案」の中に入っていた「議会モニター制度」に関しては出前講座と議会報告会で対応できるとして、はずすことに。
  6. 平成19年2月28日 19年第1回定例会において、22対11の賛成多数で採択

伊賀市議会基本条例の特徴

  • 第7条:議会報告会の開催
  • 第8条:本会議の質疑に一問一答方式 市長等に反問権付与
  • 第9条:市長からの重要な政策提案に対しては、提案に至る経緯やコスト計算など7項目の情報提供を求めている
  • 第12条:議会内議論を高めるための政策討論会の開催(結論を出すものではない)
  • 第13条:議会閉会中の委員会による出前講座の開催
  • 第18条:議案の賛否について各議員の対応を公表
  • 第20条&21条:議員定数と議員報酬 市民の直接請求と市長からの提案を除き、委員会または議員からの提出とする

感想

条例の中で定められたことは、5月に視察させていただいた北海道栗山町でも同じですが、今の自治法の中でも当然やれることばかり。議会自らがその気になれば、可能なことです。 しかし、伊賀市の場合、栗山と決定的に違うのは、条例を制定して始めた活動が多い、ということです。
栗山は、それまでの議会改革の積み重ねを改めて条文化したもので、すでにかなりの部分、議員・行政のそれぞれに周知と理解が深まっていると感じました。伊賀市では、制定過程を見てもわかるように、全員が一致しての制定ではありません。今後いかに議員が自らのこととして条例を盛りたてていくかが問われていると感じました。

それにしても、その気になれば条例の制定もできるんだ、ということを教わることができ、またその目玉である議会報告会が、成熟した市民と議会があって、はじめて機能することが可能ということも肌で感じることができました。

報告:湯浅美和子

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