*代理人視察報告*

名古屋市視察報告

名古屋市「ゴミ」視察報告


1.視察目的

「埋め立てゼロ」を目指して、さまざまな取り組みを展開する名古屋市の清掃行政、ことに3月末より開始した生ゴミ分別収集、生ゴミ処理の現場見学と担当課との意見交換によりその実態を把握し、千葉市の今後の清掃行政の施策に生かすため。

2.名古屋市の状況

名古屋市では99年1月に決定された「西1区(藤前干潟)埋め立て事業中止」を受けた「ごみ非常事態宣言」以来、紙製・プラスチック製容器包装の資源収集をはじめ、指定袋制の導入、あるいはレジ袋の削減運動に取り組んできています。その結果、98年度102万トンに達していた「ごみ量」は、2002年度には75万トンと26%の減少となり、市民一人1日あたりのごみ量は907g(2002年度)となっています。(ちなみに千葉市は02年度1058gで、2011年度958gを目指し 一人1日150gの減量を提唱中。) また資源回収量は、15万トン→36万トン(2.4倍)、埋め立て量は28万トン→12万トン(57%の減少)となっています。

 しかしここ3年ほどを見ると、ごみ量は横ばい(79万トン、76万トン、75万トン)、総排出量(ごみと資源の合計)は増加傾向にあるとのこと(108万トン、110万トン、111万トン)。そのため、今後は資源回収率をもう1段向上させることと、また「ごみ」も「資源」も元から減らす「発生抑制」の取り組みを課題として掲げています。「発生抑制」にかかわるものとして「グリーンコンシューマー」や「グリーンカンパニー」運動を進めたり、また昨年からは「エコクーぴょん」といった「脱レジ袋」を目指した施策も取り入れられています。

  そして、さらなる資源回収率アップとして新たに取り組みを始めているのが「生ごみの資源化」。『新しい課題は「生ごみにあり」!』です。古紙や容器包装は着々と資源化が進んでいますが、市民一人1日198g排出される生ごみのうち資源化されているのは3g、と生ごみの資源化はほとんど手がつけられていません。「生ごみの処理」、ことに都市部での生ごみの処理は千葉市でもこれからの「脱焼却」を目指すうえで重要な課題であるため、名古屋市で15年3月より始められた「生ごみ分別収集」の実態を見学にいきました。

3.視察

訪問先 名古屋市環境局減量推進室

  • 午後1時 名古屋市役所発→生ゴミ分別収集地区(南区・道徳学区)で収集の様子を見学
  • 午後2時 (株)アサヒ環境システム名古屋オーガニックセンター見学
  • 午後3時半 名古屋市役所議会会議室で減量推進室の担当者からゴミ処理施策の説明を受け質疑応答(午後5時まで)

(1)生ごみ分別収集に関して

名古屋市では、現在進められている「生ごみの分別収集」に先行して「地域型生ごみ処理設備設置モデル事業」が平成10年から12年の3ヵ年のモデル事業として行われていた。そのモデル事業終了後、平成13年、14年は「生ごみ資源化モデル事業」に取り組み、15年度より本格実施となった。事業をはじめるにあたり、市民の合意形成を図るため、15年3月に、対象地域の学区役職者への説明会、その後、地元住民を対象とした説明会を町内会単位で行い、20回以上の説明会の実施、さらに、町内会未加入者や独自の意見を持つ市民へも個別に訪問し、説明したとのこと。

(2)生ごみの収集と処理にかかるコスト

生ごみの分別収集のコストの概算は1トン当たり約13万円。ごみ処理費用(可燃・不燃・粗大服含む)がトン当たり約6万円なので約2倍。事業拡大の中で、経費削減努力を含め、コスト差は少なくなっていくと認識しているとのこと。

今年度予算と内訳
蓋つきバケツ 160万円
生ごみ回収用指定袋
870万円
資源化委託料 6100万円
車両借用料 3400万円
  計1億600万円
  • 4000世帯を対象にしているおり、現在は5〜6割程度の世帯が参加している。
  • 500g/世帯・日が目安で週2回(各戸収集・8時までに家の前に出す)回収。2kg入り指定袋、2トン車で2台、2人/車の収集体制。
  • ポリバケツ、生ゴミ専用袋(20リットル、9〜10枚/月、10円/袋)、水分調整剤(3kg/月、木材チップ)を各家庭に無償配布している。
     
    *見学時、午後2時前でも収集中で、夏季は長時間炎天下に置かれることによる臭いの発生も検討の必要あり。

 

 

(3)(株)アサヒ環境システム名古屋オーガニックセンター(堆肥化センター)

  1. 収集トラックごとEVで投入口へ
  2. 「食べられるもの」と「食べられないもの」の仕分け(ゴミ袋を自動的に除去)
  3. クラッシャ−(人間の「かみくだく」にあたる)
  4. 切り刻み(「消化」に相当)、「水」(食料の83%は水)と「固形物」に分かれる
  5. 発酵(微生物)により有機物とガスに分かれる。
  6. 有機物は再利用し、ガスは脱臭後、大気放出。
  • 人が食べられるものを処理している。食べられないもの(タマネギの皮など)は処理できない。
  • 脱臭はオゾン処理(スクラバー、酸化チタン使用)。脱臭に一番費用がかかる。全体の脱臭システムには特許を取得しているとのこと。
  • 処理量40トン/日→水18トン/日+ガス500立方メートル/分→脱臭設備→大気放出
  • 処理規模  当初5トン/日→現状40トン/日→70トン/日→120トン/日(可能量)
  • 微生物は空中落下菌を利用。
  • 処理コストは16円/kgが目標(設備費、人件費を含め)
  • 職員数20名。水道代20万円/月、電気代170万円/月。
  • 建物建設費約20億円(内、杭工事10億円、40m杭×1300本)当初からみると約4割くらいの設計変更が行われている(試行錯誤→堆肥化の難しさ)。
  • 水分調整剤のチップは使いまわしている。
  • 堆肥は希望する農家に無償提供している。堆肥の品質分析はしていない。
  • 特別の排水処理施設はない。

(4)名古屋市ごみ減量作戦についての質疑応答から

  • 「ごみ減量作戦」の住民の理解度は、99年2月の「ごみ非常事態宣言」発表以降開催した説明会は、町内会単位で計2300回、且つ実際に2000年8月から始まった容器包装の分別回収に関する問い合わせは、2〜3ヶ月の間に10万件にも及んだとのことだが、経過3年後のアンケート調査では、分別について「慣れてきており特に苦労は感じていない」との回答が80%以上を占めており、また排出される「資源」の分別状態も「まあまあ分別されている」と多くの人が認識しているとのこと。
  • ごみ焼却量は18%の減だが、リサイクルにはごみ処理(59,000円/トン)の1.7倍のコスト(98,000円/トン)がかかるため、ごみ量が5年間で102万トン→75万トンとなったものの、資源回収量が15万トン→35万トンとなり、ごみ処理コスト(建設費・用地取得費などを除く)は270億円→273億円となっている。5年前と処理コストはあまり変わらない結果となっているが、ごみ減量は焼却施設の小規模化や稼動停止につながっており、建替えをしないことによって浮く工場建設費などを含めて考えれば総コストは減少するものと思われる。
  • オーガニックセンターへの生ごみ処理委託費は5000万円/年/600〜700t

(5)まとめ

  • 「脱焼却の視点から」はありませんが、「埋立ゼロ」を目指し、5年間でごみ量を3/4に、焼却量を18%減、市民一人当たりごみ量907g/日(千葉市1058)、市民一人当たり「資源回収量」276g/日(同133)にしたことは、ごみ量削減による千葉市の清掃工場3工場→2工場体制の可能性を感じるものでした。
  • 「生ごみの資源化・堆肥化」については、生成物の利用など、まだまだ庁内の横の連携も作られておらず、「これから」という感じ。
  • オーガニックセンターの処理については、口頭による説明が中心であったので不明点がいくつかありました。(製品の品質分析を不要とする根拠、排水処理設備、微生物発酵、ゴミ袋の自動選別方法、製品の利用率、施設費・運転費を考慮した処理コスト値など。)
  • 緊迫感の漂った「ごみ非常事態宣言」はそれなりの効果をあげており、千葉市でも「ごみ処理費用」や「環境への負荷」「最終処分場の状況」など市民への周知をはかる努力がもっとあるべきではないでしょうか。(報告者:湯浅美和子、川本幸立)

名古屋はノンビリズム

 

視察は、まず、名古屋市の生ごみの回収風景から始まった。これが驚くなかれ戸別回収。各家庭の玄関前にぽつんぽつんとおかれた生ごみの入ったビニール袋を回収車の両側から作業の職員が拾い上げて、ぽんと投げ込む。これを道々繰り返す。今日は生ごみだけど、一般家庭ごみもおそらくこの調子で毎日集められているのだろう。

ごみの回収作業は多くが直営で行われているというから、人件費も馬鹿にならない。千葉市なら午後もごみを回収しているなんてことはないのに、ここは午後もゆったり作業を継続している。ちなみにこの日は真夏日で、日中の気温が30度。「朝から置かれた生ごみが腐りませんか?堆肥にするのに腐ってもいいんですか?」と聞くと「そうですね。これまでは気温が低かったので大丈夫だったですが〜、これからは腐るかもしれませんね」と平然とお答えになった。これが、一時が万事。バスに乗って、「市役所も県庁も昭和の初期ぐらいの建造ですか?戦災には遭わなかったのですね?」と聞いたところ「残っているということは、そうじゃないでしょうか」と悠然としたお返事。「容器リサイクルで集めた資源物はどこでどう処理されているのでしょうか?」には「・・・」。

「生ごみの水分吸収剤として一緒に入れるおがくずに添加物や化学物質などは含まれていないのでしょうか?調べているのですか?」には「いいえ」。  

ちなみに、この生ごみの回収の影の仕事人は自治会長さん。毎月市から届けられる回収袋とおがくずを各戸に分配するのだという。容器包装リサイクルによるかなり細かい分別も含めて、市民の日々の生活の中でごみの排出にかかわる手間と負担は馬鹿にならない。それなのに、税金を多く使ってまでも埋め立てるごみの量を減らそうと素直にあらゆる施策を展開する行政とそれに不満も言わず取り組む市民。千葉市からきた私の目には非効率さが目についてしかたなかったけれど、もしかして名古屋の人達って気持ちのやさしい、のんびりした人たちが多いのかも知れない。ただ、それによって着実にごみ量は3/4に減っているのですから、たいしたものです。〔山口晴美)

愛知たいようの杜

アクセス

名古屋駅から地下鉄東山線30分で藤ヶ丘駅。そこからタクシーで10分ほど。

周辺環境

100ヘクタールという広大な土地区画整理が進められているすぐ傍に里山が残る。そこに、自然に溶け込んだ福祉ゾーンを形成。

設置施設

「もりのようちえん」、「特別養護老人ホーム」、「コロボックル」(託児所)、「ゴジカラ村・雑木林物語」(ケアハウス)、「在宅介護支援センター」、「訪問看護事業所」、「訪問介護事業所」、ケアプラン室(居宅介護支援事業所、喫茶店・駄菓子屋併設、豚を飼育)、「デイサービス」、福祉専門学校など。

設置の経緯

この施設は、吉田一平さん抜きには語れません。商社勤務の猛烈サラリーマンだった吉田さんがなぜ福祉にかかわるようになったのでしょうか。それは土地区画整理によって雑木林が切り倒されていくことを食い止めたかったからなのです。

まず幼稚園をつくろうと、申請しようとすると学校法人を作らなければならないといわれびっくり。里山の自然をいかした計画を持っていくと、40人が手をつなげるスペース、30mの直線がフラットな地面で取れることなどが必要で補助金が出ないなかでのスタートだったそうです。その後、補助金は出ることになったと楽しそうに話してくれる吉田さんは本当に人や自然が好きなんです。それが17年前。その3年後に特別養護老人ホームをつくりました。

町の中にも共生アパート

町中には介護を受けるお年寄りと、福祉には無縁なOLとが同じアパートに同居する、多世代同居の介護型アパート「ぼちぼち長屋」をつくり注目を浴びています。OL募集には多くの応募があったとのことでした。若い女性の存在はお年寄りを元気にしてくれるからと部屋代の内3万円は「チャボよりまし代」として返しているそうです。

理事長吉田一平さんの理念

吉田さんの理想は共汗共酔のまち。敷地内に7ヶ所の露天風呂があり、ビールを飲める場所も確保しています。

  • 時間に追われない国(家庭、地域、子どもや老人たちのいる暮らしの場)
  • 遠回りすればするほど、多くの人たちが楽しめ、いつもぐちゃぐちゃしているから、どんな人にも役割や居場所が出来てくる。
  • 存在することに価値がある。
  • 雑木林のように、いろいろな人がいろいろなありようで暮らしており、解決とか完成とはほど遠い。

反対に学校、病院、企業、軍隊等、働く人のいる仕事の場は時間に追われる国。人生60年代の教育は時間に追われる国に行くための教育。人生80年代の教育は時間に終われない国へ帰ってからも暮らせる教育なのだと伺いました。

吉田一平語録

☆ 数値化するような第三者評価はいらない。いろいろな人が入れば評価は必要ない。
☆ 自然は原理原則を外れない。目の前の知識より大切。知識は感動のカス。
☆ 今を楽しむ
☆ 雑木林のような暮らし。
☆ 物事は解決しないー困ったと言っておく。
☆ 皆が生きることが楽になる世の中でありたい。多様な人を認め、ゆっくりと優しく生きる。ひとは何千年経過しても同じように悩む、常に未完成であっていい、そんなものなんです。ひとを責める気持ちが起きたときは、ちょっと自分のペースが速すぎると思ってみよう。

これからの夢

土地区画整理事業で整地された土地に植林をし、雑木林を再現します。せせらぎをつくり、家を建てます。その家は未完成のまま売って、完成させる過程で協働を体験。150年前の建物を移築して公民館をつくります。こうした事業をするためにゴジカラ村役場(株)を立ち上げ入村する人は入会金(村税)を払って村に住みます。村に仕事をつくり、それぞれ役割を担ってもらうという話に参加者一同イイナーと聞きほれました。これからは小規模多機能サテライト型の施設が主流になりますが、企業も関心が高く乗り出してきているそうです。太陽の杜だったら実現間違いなしですね。

 

 

たいようの杜の施設案内

幼稚園、ケアハウスなど写真でお楽しみください。自然を大切にしている様子がよくわかります。
もりのようちえんの教室は里山の中にログハウスが点在し、一つ一つに名前がついています。雨が降ると泥んこになるので長靴は必需品。お邪魔しましたのがお帰り前の時間で、木に登る子、山を走り回る子、とにかく元気。
ケアハウスは新しい施設。木材を使い、自然の樹木を切らずに建物を樹木に合わせてカットしている部分がたくさんあります。まわりは緑。幼稚園の隣です。
 

特別養護老人ホームができた頃は、個室という発想はなかったため2人、4人部屋が多い。現在の入居者70名。 〔報告:福谷章子、竹内悦子)

 

 

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